犬・猫の健康診断の数値の基礎知識|基準値と数値変化の考え方
大切な犬や猫の健康診断は毎年受けていますか?
定期健診は病気を探すためだけのものではありません。
「元気なとき」の状態を数値で把握し、その子なりの基準を知っておくことが、本当の意味での健康管理につながります。何もなさそうな時期こそ、体の内側を確認する意義があるのです。
今回は、健康診断で必ず目にする「数値」を切り口に、健康診断の必要性や結果の捉え方などを詳しく解説していきます。

目次
飼い主様が気にしやすい代表的な数値の見方
健康診断の結果用紙にはたくさんの数字が並んでいますが、全ての指標に対して気にしすぎる必要はありません。
しかし「体型(体重)」「血圧」「心拍数」などの基本的な指標について、一般的な目安と、サイズや種類による違いを知っておくと犬や猫の異常に気づきやすくなります。
<体重と体型(ボディコンディションスコア)>
体重という数字だけで判断するのは危険です。獣医師は「数字+見た目+触った感触」から肋骨の触れ具合やくびれの有無を確かめ、BCS(ボディコンディションスコア)を評価します。
■犬と猫の肥満について|食事やサプリメントなどの対策法を解説
■犬と猫の体重管理について
◆ 気にしたい体重変化とは
体重変化の目安としては、以下を気にしてみると良いでしょう。
・5%前後の変化:生活習慣や食事量の変化で起こることが多い
・10%以上の増減:体に何らかの負担や異常が起きている可能性がある
・短期間での変化:特に注意が必要。
・食欲はあるが体重が減少している:高齢による変化や甲状腺機能亢進症や腎臓病が隠れている可能性がある
たとえば、5kgの猫が4.5kgになるのは数字上は「500g減」ですが、割合で見ると10%の体重減少になります。これは人間で言えば、50kgの人が45kgになるのと同じ変化です。
体重増加が続く場合はクッシング症候群、甲状腺機能低下症などが疑われ、二次的に糖尿病や関節トラブルのリスクが高まります。
逆に体重が減る場合は消化器疾患、腫瘍、甲状腺機能亢進症、慢性腎臓病などが隠れていることもあります。
猫は犬以上に体調不良を隠す動物のため、体重変化が最初の異常サインになることが非常に多いです。
■ホルモン検査についてはこちらで解説しています
■犬のクッシング症候群はこちらで解説しています
■猫の甲状腺機能亢進症についてはこちらで解説しています
<血圧>
ペットの世界でも高血圧は存在します。体重や呼吸数などと違い、ご家庭で測るのが難しいため、病院での測定が基本です。
【正常値の目安】
・収縮期血圧(上の血圧)100〜140mmHg程度
【高血圧の目安】
・収縮期血圧160mmHg以上でリスクあり
・収縮期血圧180mmHg以上でハイリスク
病院に来ると緊張して血圧が上がる「白衣高血圧」の子も多いため、一度高い数値が出てもすぐに異常とは断定しません。リラックスした状態で何度か測定し、平均を見ます。
高血圧が続くと、網膜剥離(突然の失明)、腎不全の悪化、心臓への負担につながります。特に“高齢の猫”や“心臓病を持つ犬”は、定期的な血圧測定が欠かせません。
<心拍数と呼吸数>
聴診器がなくても、胸に手を当てたり、寝ているときの胸の動きを見たりすることでご家庭でも簡単にチェックができます。
【心拍数(1分間あたり)】
・小型犬:60〜80回(大型犬より早いです)
・大型犬:40〜60回(体が大きいほどゆっくり打つ傾向があります)
・猫:120〜180回(犬よりもかなり早いです)
病院では緊張して脈や呼吸が乱れがちになるため、お家でリラックスしているときの心拍数を把握できると良いでしょう。
【呼吸数(1分間あたり)】
犬・猫共通:安静時で20〜40回程度 (運動時は増え、睡眠中は減る)
安静にしているのに1分間に40回を超える場合は心臓病による肺水腫や、呼吸器疾患の可能性があります。
特に夏場ではない涼しい部屋で、ハァハァしていないのに呼吸が早い場合は、緊急性が高いサインです。
<血液検査の数値>
健康診断の結果項目の中でも、特に難解なのが血液検査の数値かもしれません。
こちらに各項目の基準値目安をまとめました。
◆ 赤血球(RBC)・ヘマトクリット(HCT)
この数値が基準値よりも低い場合は貧血、出血、腎臓病、慢性疾患などが、高い場合は脱水の可能性が考えられます。
| 犬の基準値目安 | 猫の基準値目安 | |
| 赤血球(RBC) | 550〜850万/µL | 500〜1000万/µL |
| ヘマトクリット(HCT) | 37〜55% | 30〜45% |
◆ 白血球(WBC)
体の中で炎症や感染が起きていないかを見る指標です。過剰に多い場合は、白血病や血液腫瘍を疑います。
| 犬の基準値目安 | 猫の基準値目安 | |
| 白血球(WBC) | 6000〜17000/µL | 5500〜19500/µL |
◆ 血中尿素窒素 (BUN)・クレアチニン(CRE)・SDMA・リン(P)・シスタチンC
いずれも腎臓の健康状態を評価する重要な項目です。
特にシニア期の猫に多い慢性腎臓病を診断するのに欠かせない項目です。
慢性腎臓病の評価には、血液検査に加えて尿検査(尿比重・尿たんぱく等)、レントゲン検査、腹部超音波検査などを組み合わせて行う必要があります。
| 犬の基準値目安 | 猫の基準値目安 | |
| 血中尿素窒素 (BUN) | 7〜27 mg/dL | 17〜30 mg/dL |
| クレアチニン(CRE) | 0.5〜1.5 mg/dL | 0.8〜2.4 mg/dL |
| SDMA | 0–14 µg/dL | 0–14 µg/dL |
| リン(P) | 2.5–6.0 mg/dL | 3.0–7.0 mg/dL |
SDMAと同様に、腎機能低下の指標として、「シスタチンC」の項目が加わることもあります。
◆ タンパク・糖・脂質(TP/Alb/血糖Glu/コレステロールT-Cho)
栄養状態や水分バランス、肝臓・腎臓・消化管の働き、そして糖尿病や脂質代謝の異常がないかを広く確認する項目です。
| 犬の基準値目安 | 猫の基準値目安 | |
| 総蛋白(TP) | 5.5–7.5 g/dL | 6.0–8.0 g/dL |
| アルブミン(Alb) | 2.6–4.0 g/dL | 2.7–4.0 g/dL |
| 血糖(Glu) | 70–120 mg/dL | 70–150 mg/dL |
| 総コレステロール(T-Cho) | 120–270 mg/dL | 80–220 mg/dL |
◆ 電解質(ナトリウムNa/カリウムK/クロールCl)
体の水分量や神経・筋肉の働き、酸塩基バランスを保つために欠かせない“体内のミネラルバランス”をみる項目です。
嘔吐・下痢、脱水、腎臓や内分泌(副腎など)のトラブルで変動しやすく、急な変化は体調に影響することがあります。
| 犬の基準値目安 | 猫の基準値目安 | |
| ナトリウム(NA) | 140–155 mEq/L | 145–158 mEq/L |
| カリウム(K) | 3.5–5.5 mEq/L | 3.4–5.6 mEq/L |
| クロール(CL) | 105–120 mEq/L | 112–129 mEq/L |
◆ 肝酵素(ALT/AST/ALKP/GGT)
肝臓や胆のう・胆管(胆道)に負担がかかっていないかを見る指標です。これらは「肝臓の元気度そのもの」ではなく、肝臓の細胞が傷ついたり、胆汁の流れが滞ったりすると上がりやすい“サイン”となります。
| 犬の基準値目安 | 猫の基準値目安 | |
| アラニントランスフェラーゼ(ALT) | 10–125 U/L | 10–100 U/L |
| アスパラギン酸トランスフェラーゼ(AST) | 15–45 U/L | 10–50 U/L |
| アルカリフォスファターゼ(ALP) | 20–150 U/L | 10–60 U/L |
| ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT) | 0–10 U/L | 0–6 U/L |
◆ 甲状腺(T4)
甲状腺は体の代謝を調整するホルモンを出す臓器で、元気の度合いのほか、体重・皮膚被毛・心拍など全身の状態に関わります。
犬では甲状腺機能低下症、猫では甲状腺機能亢進症が代表的で、症状や他の検査(特にコレステロール等)と合わせて評価します。
| 犬の基準値目安 | 猫の基準値目安 | |
| 総T4(TT4) | 1.0–4.0 µg/dL | 1.0–4.0 µg/dL |
◆ 心臓(NT-proBNP/BNP)
NT-proBNP(BNP)は、採血で測定できる心臓バイオマーカーで、心臓に負担がかかっていないか(心臓が引き伸ばされているサインがないか)を数値で把握する手がかりになります。
ただし数値だけで確定診断はできないため、心雑音の有無やレントゲン検査、心エコー検査などと組み合わせて総合的に評価します。
| 犬の基準値目安 | 猫の基準値目安 | |
| NT-proBNP/BNP | 900 pmol/L 未満 | 100 pmol/L 未満 |
全ての検査・項目に言えることですが、これらの数値は、年齢(子犬・子猫)や健康状態、食事(絶食の有無)、興奮・緊張などの影響で一時的に変動することがあります。
また、基準範囲内に収まっていても、以前より上昇したり下降する傾向が見られる場合は、体が変化し始めているサインと捉えることができます。
こうした「数値そのもの」よりも、「どう変わってきているか」を見る視点を動物病院では大切にしています。
※「基準値」は測定キットのメーカーで異なるため、結果票に記載の参照範囲を参考にしてください。
健康診断でわかる「いつもの状態」とは何か
体重、体温、心拍数、血液検査の項目などを、定期的に記録していくことで、「この子はこのくらいが普段の数値」というおおよその基準が見えてきます。
健康診断を一度だけ受けても、その時点での情報しか分かりません。しかし、年に一度、理想は半年ごとに検査を重ねることで、少しずつ積み上がったデータからその子だけの基準値が分かるようになります。
このデータの積み重ねがあることで、体調が崩れたときに「急な変化なのか」「以前から続いている傾向なのか」を判断しやすくなります。
「正常値」でも安心できない理由|変化を見ることの重要性
検査結果がすべて基準範囲内だった場合、飼い主様はひとまず安心されると思います。
ただし、「正常値だから大丈夫」と一概に言い切れないケースもあります。
たとえば、数年前は低めだった数値が、毎年少しずつ上昇している場合です。その変化は基準範囲内でも、ペットの体に何らかの負担がかかり始めているサインかもしれません。
逆に、これまで安定していた体重や血液データが、急に変化した場合も注意が必要です。こうした変化は、過去のデータがなければ見逃されてしまいます。
「今の数値」だけではなく、「これまでとの違い」にも目を向けてみてくださいね。
病気やケガのときに役立つ「過去の健康データ」
体調不良やケガで急に受診することになった場合、過去の健康診断データは非常に重要な判断材料になります。健康なときの身体の状態を数値化したデータは「かけがえの無い財産」です。
「もともとこの数値は高めだったのか」
「今回初めて変化が出たのか」
こうした情報があることで、検査の優先順位や治療方針を考えやすくなります。
また、投薬の影響や体への負担を予測する際にも役立ちます。
健康診断の記録は、将来のもしものときに備える保険のような役割も果たしてくれるのです。
まとめ|定期的な健康診断で「その子の基準」を知りましょう!
犬や猫の健康管理は、症状が出てからでは手遅れになることがあります。
元気なときの状態を知り、その子なりの基準を持っておくことが、病気の早期発見や適切な対応につながります。
当院は通年で健康診断を受け付けています。豊富な検診メニューから気になる項目だけ検査いただくことも可能です。
また、健康診断や検査内容や結果について、わからないことがありましたらどのようなことでもお尋ねください。丁寧に回答いたします。
定期的な健康診断は、年齢や生活環境の変化を確認し、その子に合った健康管理を考えるための大きな手がかり。「何もない健康なときだからこそ」得られる情報を確認しましょう。
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