CLINICAL DEPARTMENT

診療科別

DAIGO PET CLINIC

犬と猫の皮弁形成術について|皮膚の腫瘍やケガに対応する手術と治療法

皮弁形成術は、手術で失われた広い範囲の皮膚を補うために行われる治療法です。血管が少ない部分でも、周囲の健康な皮膚を使って縫い合わせることで、治りを早めることができます。
愛犬や愛猫にとって、傷が早く治るための大切な手術のひとつであり、より快適に回復できるようにサポートする方法です。

今回は、皮弁形成術が必要となる犬や猫の代表的な病気について解説します。さらに、手術の具体的な方法や術後のケアのポイントについてもご紹介します。

皮弁形成術が必要になるケースとは?

皮弁形成術は、以下のような病気やケガで必要になることがあります。

<皮膚の腫瘍>
肥満細胞腫、軟部組織肉腫、扁平上皮癌などの腫瘍が皮膚にできた場合、手術で腫瘍とその周りの皮膚を切除する必要があります。
しこりが小さい場合は問題になりにくいですが、大きくなると失う皮膚の範囲も広がり、皮弁形成術で補うことが効果的です。

<皮膚のケガ>
他の動物に咬まれたり、火傷を負ったりしたとき、皮膚に大きな傷ができることがあります。このようなケースでは、傷口をカバーするために皮弁形成術が適応されることがあります。

<目の病気>
目の表面にある角膜には血管がないため、傷ができると治りにくいことがあります。特に、治りにくい角膜潰瘍などの場合、結膜という目の表面を覆っている薄い膜の一部を角膜に移動させて縫い合わせます(結膜フラップ)。これにより、結膜の血管が角膜に届き、傷の治りを早める効果が期待できます。

 

皮弁形成術の流れと手術方法

皮弁形成術は、手術前の準備から手術中の工程まで、しっかりと計画を立てて進められます。

<術前の準備>
まず、手術を始める前に、腫瘍や潰瘍の大きさを確認し、どのような形の皮弁を作るのが適切かを検討します。
皮弁の形を決める際には、皮膚の下にある筋肉や血管の位置も詳しく調べて、適切な形状を考えることが大切です。

<手術の進め方>
腫瘍を取り除く際は、マージン(周りの健康な組織)も含めて、余裕をもって切除する必要があります。その後、以下のような方法で皮膚をつなぎ合わせ、傷を補います。

回転皮弁:皮弁を回転させて、共通の境界を持つ欠損部を覆います。
転位皮弁:長方形の皮弁を隣接する欠損部に移動させて覆います。
前進皮弁:長方形の皮弁を伸ばし、隣の欠損部をカバーします。
蝶番皮弁:手足の傷が広範囲の場合、お腹に作った皮弁を包帯のように巻きつけて縫い合わせます。

角膜潰瘍がある場合は、結膜の一部を使って傷を覆います
この方法を結膜皮弁(フラップ)と呼び、傷の大きさに応じて目全体を覆ったり、橋のような形でかぶせたりして、治癒を促します。

 

術後のケア

皮弁形成術を受けた後には、いくつかの注意が必要です。特に、皮膚が壊死してしまう、むくみ(浮腫)が生じる、または手術した部分が裂けるといった問題が見られることがあります。これらの問題は、皮弁が広範囲に必要な場合に特に起こりやすいです。

手術の際には、皮膚が均等に引っ張られているかを確認しながら、皮弁の大きさや位置を慎重に決めることが重要です。術後には、傷口の周りに空間ができることで液体がたまることもあるため、必要に応じてドレーン(排液用の管)を設置して、液体のたまりを防ぎます。

皮膚の壊死や浮腫は、部分的であれば自然に回復することが多いです。そのため、術後のご自宅でのケアとしては、激しい運動を避けて、できるだけ安静に過ごすように心がけてください。愛犬や愛猫が快適に過ごせるよう、しばらくの間、無理のない環境を整えてあげることが大切です。

 

まとめ

皮弁形成術は、主に皮膚の腫瘍を取り除く際に行われる手術で、広い範囲の皮膚が失われても治療が可能です。
しかし、その分手術は複雑になり、愛犬や愛猫の体にかかる負担も大きくなります。そのため、皮膚にしこりや異変を見つけた際は、早めに動物病院で診察を受けることが大切です。
早期に対処することで、手術の負担を軽減できる可能性もありますので、愛する家族のために、日頃から健康チェックを心がけましょう。

 

■愛知県の豊田市、岡崎市、日進市、名古屋市名東区で動物病院をお探しの方はダイゴペットクリニックへお越しください!
豊田中央医療センターの病院案内ページはこちら
岡崎大和院の病院案内ページはこちら
日進オハナ院の病院案内ページはこちら
名古屋名東院の病院案内ページはこちら

※記事作成当時のエビデンスに基づくもので最新のものと異なる可能性があります。