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DAIGO PET CLINIC

犬の胃捻転整復術|緊急性の高い症状と治療法をわかりやすく解説

以前、犬や猫に見られる「胃捻転」という病気についてご紹介しました。

胃捻転についてはこちらから

この病気は、胃がねじれてしまうことで引き起こされ、進行が非常に速いのが特徴です。放置すると命に関わることもあるため、早期の発見と迅速な治療がとても重要です。

胃捻転の治療には、基本的に手術が必要となりますが、今回はその中でも「胃捻転整復術」と呼ばれる治療法について詳しくご説明します。
胃捻転整復法にはいくつかの術式があり、それぞれの方法は犬や猫の状態に応じて選択されます。

胃捻転とは?

胃捻転は「胃拡張・胃捻転症候群」とも呼ばれ、特に胸の深い大型犬でよく見られる病気です。
健康なとき、犬の胃はおなかの中で宙づりのような状態になっています。しかし、何らかの拍子に胃が回転してねじれてしまうと、ゲップや嘔吐ができなくなるほか、大きな血管(後大静脈)が圧迫されて血液の流れが悪くなり、循環障害を引き起こしてしまいます。

さらに、このような状態は自然に治ることはほとんどなく、病気が進行するスピードも非常に速いのが特徴です。そのため、胃捻転が疑われる場合は早急な処置が命を守る鍵となります。

 

症状と重症度の見分け方

胃捻転の初期症状として、ねじれた胃にガスがたまることで吐こうとしても吐けない、苦しそうな様子を見せる、おなかが膨れてくるなどが見られます。

さらに病気が重症化すると、膨らんだ胃が大きな血管(後大静脈)を押しつぶし、循環障害を引き起こします。
その結果、呼吸が苦しそうになる、粘膜の色が青白くなる、突然倒れる、といった症状が現れます。

胃捻転は、発症から短時間のうちに重症化してしまう病気なので、初期症状の段階でいち早く気づき、適切な緊急治療を行うことが重要です。

 

診断方法

・レントゲン検査
胃捻転を診断する際には、主にレントゲン検査が行われます。この検査では、胃がねじれているかどうか、異常に膨らんでいるかを確認します。
胃が本来の位置からずれ、大量のガスが溜まっている様子が見られる場合は、胃捻転が疑われます。

このとき胃は特徴的な逆C字(ポパイサイン)を呈します。胃捻転のレントゲン写真。胃が逆C字(ポパイサイン)になっている様子が確認できる。

・血液検査
必要に応じて血液検査を行い、全身の健康状態を詳しく確認します。この検査は、胃捻転によって起こるショックや臓器へのダメージを把握するために重要です。

 

実際の治療方法(胃捻転整復術)

胃捻転整復術は、ねじれた胃を正常な位置に戻し、腹壁(おなかの壁)に固定することで再発を予防する手術です。具体的には、犬や猫の状態に応じて以下の方法が使い分けられます。

<肋骨周囲 胃-腹壁固定術>
胃の幽門部(小腸側)にU字型の切れ目を入れ、弁のような形(フラップ)を作ります。このフラップを第11または12肋骨の軟骨部分に通して固定する方法です。

 

<ベルトループ 胃-腹壁固定術>
「肋骨周囲 胃-腹壁固定術」と同じように幽門部にフラップを作りますが、次に腹膜(おなかの内側の膜)に2箇所の切れ目を加えます。
その後、フラップを腹膜の切れ目に通し、最終的にフラップの先端を幽門部の切開部分で縫い付けます。

 

<切開 胃-腹壁固定術>
幽門部と腹壁の両方にそれぞれ4~5cmの切れ目を加えます。そして、その切れ目同士を糸で縫い合わせる方法です。

 

<腹側正中 胃-腹壁固定術>
幽門部と腹壁の真ん中(正中)を糸で縫合して固定します。

上記の手術に加えて、脾臓の手術(脾臓摘出)や胃底部の手術(胃壊死部の陥入縫合)を実施することもあります。これらの追加手術が必要かどうかは、手術中に臓器の状態を確認して判断します。

 

よくある質問(FAQ)

当院で多くの飼い主様から寄せられるご質問とその回答をまとめましたので、ぜひご参考にしてください。

Q.手術後の再発はありますか?
A.再発の可能性は非常に低いことがわかっています。どの術式でも再発率は数%程度とされており、適切な術後管理を行えば安心です。

 

Q.胃捻転の予防のために、食事はどのように与えたらよいですか?
A.一度に大量のごはんを食べることが胃捻転の原因になることがあるため、1日の食事を2回以上に分けて、少量ずつ与えるようにしましょう。また、食後すぐの激しい運動は避けてください。

 

Q.手術にはどのようなリスクがありますか?
A.胃捻転の手術では、症状が出てから時間が経っている場合や、胃が大きく膨れている場合、さらにショック症状を伴っているケースでリスクが高まることがあります。これらの状態では体力が著しく低下し、手術中や術後の合併症が起こる可能性が増します
ただし、こうした場合でも早めに受診していただければ、状態を安定させる処置を行い、リスクを軽減できる可能性があります。

 

まとめ

胃捻転は、大型犬に特に多く見られる病気で、進行が非常に速いのが特徴です。この病気は、すぐに対処しないと命に関わる危険性があるため、初期症状に気づいたら迷わず動物病院を受診することが何よりも重要です。

治療にはいくつかの方法があり、当院では愛犬や愛猫の状態をしっかり見極めた上で、愛犬や愛猫に最も適した治療法を選択しています。どの方法でも再発の可能性は非常に低いため、治療後は安心して生活を送れるケースがほとんどです。

胃捻転は早期発見が鍵となる病気です。普段から愛犬や愛猫の様子を注意深く観察し、いつもと違うサインを見逃さないように心がけましょう。

 

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※記事作成当時のエビデンスに基づくもので最新のものと異なる可能性があります。