犬や猫が雷・花火を怖がるのはなぜ?|怖がりではなく「音恐怖症」の可能性も
夏が近づくと増えてくるご相談のひとつが、「音」に対する犬や猫の反応についてです。
雷や花火の音はとても大きく、突然鳴り響くため、驚いて震えてしまったり、雷が鳴るたびに家具の下やカーテンの裏などに隠れてしまったりすることもあります。
こうした行動を見て、「うちの子はちょっと怖がりなだけ」と思われる飼い主様も多いかもしれません。
しかし、実はこれらの反応は単なる性格の問題ではなく、「音恐怖症(おときょうふしょう)」と呼ばれる状態の可能性もあります。
音恐怖症は雷や花火といった大きな音に強い不安や恐怖を感じ、それが行動として現れるもので、場合によっては行動療法や薬を使った治療が必要になることもあります。
犬や猫が強いストレスを感じ続けることがないよう、適切に対処してあげることが大切です。
今回は「犬や猫が雷や花火の音を怖がっている」とお悩みの飼い主様に向けて、正しい知識と対処法をお伝えします。
目次
音恐怖症とは?|ただの怖がりではない、“心の病気”かも
音恐怖症とは、雷や花火などの特定の大きな音に対して、犬や猫が過剰な不安や恐怖の反応を示す状態のことを指します。これは単なる性格の問題ではなく、「問題行動」のひとつと考えられています。
きっかけとしては、一度でも強い恐怖を感じた経験が影響していることが多く、その経験が心に残ってしまうことで、似たような音を聞いたときに強い反応を示すようになります。また、特に反応が強いケースでは、子犬のころから恐怖を感じるようになることもあります。
この音恐怖症は犬によく見られる傾向がありますが、実は猫でも同じような症状が確認されています。普段は落ち着いている犬や猫が、音に対して急にパニックになったり、隠れて出てこなくなったりする場合は、音恐怖症の可能性も考えられます。
音恐怖症のサイン|見逃しやすいSOSに気づいてあげましょう
雷や花火など、特定の大きな音に反応して、以下のような様子が見られる場合は、音恐怖症の可能性があります。
・体を震わせる
・よだれを垂らす
・家具の下やカーテンの裏などに隠れる
・激しく吠える
・パニックになって家の中を走り回る
・ごはんを食べなくなる
・排泄を失敗してしまう
・飼い主様から離れられず、ぴったりくっついて離れようとしない
このような行動は、怖い音を聞いたときに限って繰り返し起こる傾向があり、条件反射のように症状が出るのが特徴です。特定の音に強く反応する場合には、音恐怖症を疑ってみてもよいかもしれません。
ただし、こうした症状が音に関係なく普段から見られる場合には、他の行動上の問題や、体の不調(病気など)が関係していることも考えられます。そのため、気になる様子が続くときは、早めに獣医師に相談してみることをおすすめします。
慣れさせるだけでは難しい|自然に治るとは限りません
犬や猫が音に敏感な様子を見せたとき、「そのうち慣れるだろう」「怖がりな性格だから仕方ない」と思われる飼い主様もいらっしゃるかもしれません。しかし、音恐怖症は自然に良くなるとは限らず、むしろそのままにしておくことで症状が悪化してしまうこともあります。
たとえば、最初は雷の音だけに反応していたのに、次第に花火の音や車の音、さらにはインターホンなど、生活の中にあるさまざまな音にも敏感になってしまうというケースも見られます。
こうなると、犬や猫が安心して過ごすことが難しくなり、日常生活に支障をきたすこともあるのです。
そのため、「音に敏感な性格」と片づけてしまわずに、必要に応じて専門的な対処や治療を考えることが大切です。
動物病院でできること|音恐怖症への治療とケアの選択肢
音恐怖症は、「怖がりな性格」では片づけられない心の不調です。飼い主様だけで抱え込まず、動物病院での治療やサポートを検討してみましょう。
症状の程度や性格、生活環境に応じて、次のようなケアが行われます。
◆ 行動診療(トレーニングによるケア)
音に少しずつ慣らしていく「脱感作」や、怖い音を楽しいことと結びつける「拮抗条件づけ」といった方法を使いながら、音への過剰な反応をやわらげていきます。
たとえば、録音した雷や花火の音を最初は小さな音量で短時間だけ聞かせ、犬や猫が落ち着いていられるようなら、少しずつ音量や時間を増やしていくといった段階的なトレーニングを行います。
◆ 薬物療法
音に対する反応がとても強い場合や、日常生活に支障が出ている場合には、抗不安薬や抗うつ薬といったお薬を使用することもあります。必要に応じて、獣医師が慎重に判断しながら処方します。
◆ サプリメントやフェロモン製剤の使用
お薬を使うほどではない場合や、より穏やかなサポートを希望される場合には、不安をやわらげる働きのあるサプリメントや、安心感を与えるフェロモン製剤を使う方法もあります。
当院では犬・猫に利用可能なサプリメントとしてジルケーンやフェリウェイをおすすめしています。
・ジルケーンについてはこちら
・フェリウェイについてはこちら
◆ カウンセリング
ご家庭での様子や行動パターンを詳しくお伺いし、生活環境や接し方について具体的なアドバイスをお伝えします。日常の中でできる小さな工夫や、気をつけていただきたいポイントなどを丁寧にご案内いたします。
音恐怖症は、飼い主様のやさしさや努力だけでは対応が難しい場合もあります。ときには、「怖がっているから」と過剰に慰めてしまうことで、不安な気持ちが強化されてしまうこともあるため、正しい知識と対応がとても大切です。
犬や猫の性格や生活スタイルにあわせて、無理のない方法を一緒に考えていくことが、心の安定につながります。
当院では、状態に応じたオーダーメイドのケアをご提案しておりますので、お悩みの際はどうぞお気軽にご相談ください。
ご家庭でできる対策|音への不安をやわらげるために、今日からできる工夫
音恐怖症への対処は、動物病院での治療と並行して、ご家庭でのサポートもとても大切です。
少しでも犬や猫の不安をやわらげ、安心して過ごせるように、以下のような工夫を取り入れてみてください。
◆ 雷や花火の予報をチェックして、早めに準備を
夏場は雷や花火の季節です。天気予報や花火大会の情報を事前に確認し、落ち着ける環境を整えておくことで、突然の音に驚くリスクを減らせます。余裕をもって準備しておくことが安心につながります。
◆ 音をやわらげるための工夫を
雷や花火の音をできるだけ室内に入れないように、厚手のカーテンを閉めたり、雨戸を使ったりすると効果的です。また、テレビや穏やかな音楽を流すことで、外の音を目立たなくする工夫もおすすめです。
◆ 安心して隠れられる場所を用意する
クレートやケージなど、静かで落ち着ける「安心の隠れ家」をつくってあげましょう。日頃からクレートに慣らしておくことで、怖い音が聞こえたときにも自分からその中に入って安心できるようになります。
まとめ|音恐怖症は治療できます
大きな音に対して強い不安や恐怖を感じるのは、犬や猫の「性格」だけの問題ではなく、きちんと向き合っていくべき心の問題のひとつです。
そのままにしていても自然に落ち着くとは限らず、症状が悪化してしまうこともあります。だからこそ、早めに気づき、適切な治療やケアを行うことが大切です。
もし、犬や猫が雷や花火の音に対して過度におびえるようであれば、お気軽に当院までご相談ください。
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