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マダニによるトラブルが身近に|SFTSという感染症をご存じですか?

最近では、マダニに関するトラブルがとても身近なものになり、ニュースやSNSなどで目にする機会も増えてきました。
先日、三重県の獣医師の方が「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」という感染症にかかり、命を落とされたという痛ましい報道があり、SFTSという病気の怖さを私たちにあらためて突きつけるものとなりました。

SFTSは、マダニを介してうつるウイルス性の感染症で、犬や猫だけでなく、私たち人間にも感染することがある「人と動物の両方に関係する感染症(人獣共通感染症)」です。

今回は、SFTSとはどのような病気なのか、そして日常生活の中でどのような対策ができるのかを解説します。

SFTSとは?|人にも動物にも感染するウイルス性の感染症

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、マダニが媒介するウイルスによって引き起こされる、ウイルス性の感染症です。
自然界では、一部のマダニがSFTSウイルスを保有しており、そのマダニに咬まれることで、犬や猫、そして人にも感染が広がるおそれがあります。

この病気は「人獣共通感染症(じんじゅうきょうつうかんせんしょう)」と呼ばれ、動物にも人にも感染する特徴を持っています。
そのため、犬や猫を守るだけでなく、飼い主様の健康を守るうえでも、日ごろの予防や対策がとても重要です。

 

<人の場合>
国立感染症研究所の発表によると、日本では毎年およそ100人前後のSFTS患者が確認されています。
人での致死率は6.3〜30%とされており、決して油断できない病気です。2021年7月時点では、日本国内で641人の患者のうち、80人が亡くなったと報告されています。

 

<猫の場合>
猫では、SFTSにかかると重い症状を引き起こすことが多く、2023年には全国で194頭の感染例が報告されました。
発症した場合の致死率は約60%といわれており、非常に注意が必要な感染症です。

 

<犬の場合>
犬については、猫に比べると報告例は少ないものの、感染しても症状が出にくい「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」の状態になることが多いのではないかと考えられています。
ただし、症状が出にくいからといって安心できるわけではなく、犬がウイルスを媒介してしまう可能性もあるため、やはり予防は欠かせません。

 

マダニの活動時期と身近なリスク|草むら・公園・庭先にも潜む危険

マダニは暖かい気候を好むため、春から秋にかけて特に活動が活発になります。
ただし、冬でも完全にいなくなるわけではなく、暖かい室内などに潜んでいる可能性もあり、一年を通して注意が必要です。

さらに気をつけたいのが、飼い主様の衣類や靴などにマダニが付着し、それが家の中に持ち込まれてしまうケースです。草むらや河川敷のような自然の多い場所だけでなく、ベランダの植え込みや、都市部の公園など、身近な場所にもマダニは存在しています。

そのため、「うちは室内飼いだから大丈夫」「マンションだから心配ない」と思っていても、まったく油断はできません。
マダニ対策は、どんな住環境であっても取り入れておくことが、犬や猫の健康を守るうえでとても大切です。

 

SFTSの予防には“マダニ対策”がカギ|動物病院でできる定期的な駆虫ケア

SFTSには、現時点で有効なワクチンや治療薬がありません
そのため、病気の原因となるマダニに「咬まれないこと」が何よりも大切です。そのためにマダニを生活環境に持ち込まないためにもマダニの駆除に効果的なお薬を定期的に投与することが大切になってきます。

動物病院では、マダニの駆除に効果的なお薬を取り扱っており、犬や猫の性格やライフスタイルにあわせて選ぶことができます。

 

<スポットオンタイプ>
首の後ろに薬液を垂らして使うタイプで、皮膚から吸収されて全身に作用します。
チュアブルタイプ(食べるお薬)を犬や猫にも使いやすく、比較的ストレスが少ない方法です。

 

<チュアブルタイプ>
おやつのように与える内服タイプの予防薬で、食事と一緒に与えることも可能です。投与が簡単で、動物にも受け入れられやすいのが特徴です。

🔽投薬方法についてはこちらで解説しています

これらの予防薬は、通常月に1回のペースで継続的に投与します。決まったスケジュールで忘れずに与えることで、薬の効果が切れ目なく続き、マダニの駆除効果がしっかりと得られます。

 

お散歩やレジャーの前に|日常生活でできるマダニ予防

予防薬の定期投与とあわせて、マダニを寄せ付けないようにする日ごろからの工夫も大切になります。

 

お散歩後のケアを習慣に
お散歩から帰ったら体の表面を目視でチェックし、マダニが付着していないか確認しましょう。特に耳のまわり、足の付け根、お腹などはマダニが付きやすい部位なので、丁寧に見てあげてください。

また、ブラッシングを行うことで、毛の奥に隠れているマダニを見つけやすくなります。あわせて、タオルで体を拭いてあげるのも清潔を保つうえでおすすめです。

 

お散歩時のちょっとした工夫
マダニは、草むらや茂みなどに潜んでいることが多いため、こうした場所をできるだけ避けるようにしましょう。
また、飼い主様ご自身も長袖・長ズボンを着用し、肌の露出を減らすことで、マダニの付着を防ぐことができます。

 

虫よけグッズを上手に活用
市販の虫よけスプレーやマダニ忌避製品などを取り入れるのもひとつの方法です。ただし、すべての製品が犬や猫に安全とは限りませんので、使用前には必ず動物に使っても大丈夫か確認するようにしましょう。

 

まとめ|正しい知識と予防が何よりも大切です

SFTSは、命にかかわることもある感染症です。
最近の報道からも分かるように、マダニは私たちのすぐ身近に潜んでおり、どなたにとっても無関係ではありません。

この病気は人と動物の両方に感染する「人獣共通感染症」であるため、犬や猫を守ることが飼い主様の健康を守ることにもつながります。

まずは、マダニ予防薬の定期的な使用と、日々のちょっとした予防の工夫から始めてみましょう。
「うちの地域でもマダニは多いの?」「最近元気がないかも」といったご不安がありましたら、いつでも当院までご相談ください。

 

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※記事作成当時のエビデンスに基づくもので最新のものと異なる可能性があります。

 

<参考文献>

国立感染症研究所・応用疫学研究センター(2024年8月1日)「国内外における重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の発生状況について」IDWR・IASR. https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/12668-sfts-ra-0801.html (2025年7月1日閲覧)