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犬や猫のお腹が膨らむ原因は?放置厳禁の危険な症状・サインを獣医師が解説

「最近、ポッコリお腹が膨らんで見える」「触るとパンパンに張っているように感じる」
──そんな違和感を覚えたことはありませんか?

突然ペットのお腹が膨らんでいることに気づくと、すぐに病院に行くべきなのか、自宅で様子見をして良いのか迷ってしまうと思います。

実は、犬や猫のお腹のふくらみは、単なる生理的な変化だけでなく、命に関わる病気のサインであることもあります。
お腹が膨らむ原因は、胃や腸、肝臓、心臓など多岐にわたり、緊急性の高いケースと、
様子を見てもよいケースの見極めが非常に重要です。

今回は、お腹のふくらみについて、飼い主様が「今すぐ受診すべきか」「少し様子を見てよいか」を判断できるよう、動物病院の現場からお伝えします。

犬や猫のお腹が膨らむときに考えられること

犬や猫のお腹が膨らむ理由は、腹腔内にガス、液体、消化物や便などが溜まっていたり、腫瘤が形成されていたり、腹部の筋肉が萎縮したりするためです。獣医学的には「腹部膨満」と呼びます。
見た目では「太ったように見える」程度でも、実際には内臓に異常が起きていることも珍しくありません。
病的な腹部膨満は体が発する重要なサインであり、放置すると短時間で危険な状態に進行する病気も存在します。

まずは、どのような場合に緊急性が高いのかを冷静に見極めることが大切です。

 

お腹のふくらみを確認するときの観察ポイント

「お腹が膨らんでいる気がする」と感じたら、以下のポイントを確認してみてください。
当てはまる場合は危険なサインである可能性が高いので、すぐの受診が必要です。

触るとパンパンに張っている/硬い
ガスや液体が過剰に溜まると、お腹が風船のようにパンパンになります。通常の柔らかさとは明らかに異なります。

呼吸が早い・浅い/苦しそうにしている
お腹の圧迫によって横隔膜がうまく動かず、肺が十分に膨らんでいない状態です。このような呼吸の変化は命に関わる緊急サインです。

吐こうとしても吐けない/よだれを垂らす
大型犬に多く、胃の出口が塞がれていたり胃がねじれたりしている可能性があります。胃拡張・胃捻転など緊急手術が必要になる病気が疑われます。

ぐったりして動かない/立ち上がれない
体の中で重大な異常が起きているときに見られる全身症状です。内出血やショック状態の可能性があり、非常に危険です。

歯ぐきの色が白い・黄色っぽい
白い場合は貧血や大量出血、黄色っぽい場合は肝臓の異常や黄疸が疑われます。血液循環や臓器トラブルのサインであり放置できません。

 

すぐ病院へ!緊急性が高い腹部膨満の例【緊急度・高】

こちらで挙げた症状が見られる場合は、数分〜数時間単位で命に関わることがあります。
代表的な緊急疾患をいくつかご紹介します。

 

<胃拡張・胃捻転>
以下のような症状は胃拡張・胃捻転の典型例です。特に大型犬で多く見られますが、大型犬以外の犬種でも起こることがあります。

・食事後に突然お腹がパンパンに膨らみ、落ち着きがなくなる
・吐こうとしても吐けない

胃の中にガスが充満し、胃がねじれることで血流が途絶え、短時間でショック状態に陥る危険な病気です。
数時間以内の外科手術が必要になることもあるため、夜間でもすぐに病院を受診してください。

 

<腹水(心臓・肝臓・腫瘍など)>
腹水とは、お腹の中(腹腔)に体液が溜まる状態です。心臓や肝臓の病気、腫瘍(がん)によって血液やリンパの循環が滞ることで起こります。

・動くとお腹の中がちゃぽちゃぽしているように見え、触ると水っぽい感触がある
・お腹が膨らんでいるのに体重は増えていない
・元気や食欲が低下している
・呼吸が浅く、息が苦しそうに見える
・運動を嫌がる、疲れやすい

腹水はゆっくり進行することが多く、太ったと勘違いされて発見が遅れる危険があります。しかし、心不全や肝硬変、腹腔内腫瘍(がん)など重大な病気が隠れていることが少なくありません。 放置すると呼吸が悪化することもあるため、早期の診察と原因精査が重要です。

腹水には以下の種類があり、原因に応じて性質が異なります。

漏出性腹水:心不全、肝不全など
滲出性腹水:腹膜炎、感染症など
血腹:腫瘍破裂、外傷など

腹水は見た目だけでは判断できないので、超音波検査・腹水検査が必要です。

 

<腹腔内出血(交通事故・腫瘍破裂など)>
以下の場合は腹腔内出血の可能性があります。

・事故や転倒後、徐々にお腹が膨らんできた
・歯茎が白い
・脈が弱い

ぐったりしているようであれば急いで動物病院へ行きましょう。

 

<子宮蓄膿症(避妊していない中〜高齢の雌犬・猫)>
発情後、数週間以内に元気がなくなり、お腹が膨らんだ場合は子宮蓄膿症の可能性があります。くわえて、以下のような症状も見られることがあります。

・発熱
・嘔吐
・陰部から膿のような白っぽい分泌物が出る

放置すると敗血症やショック状態を招く危険性があります。

 

<腸閉塞(異物誤飲)>
腸閉塞はおもちゃや布などを飲み込んだことで腸が詰まり、ガスや液体が溜まる病気です。

・吐き気
・食欲不振
・便が出ない

異物が腸を傷つけたり、腸が壊死する前に外科的処置で取り除く必要があります。

ダイゴペットクリニック(豊田中央医療センター)は夜間救急診療も対応しています。深夜早朝の場合も電話対応を実施していますので、このような病気が疑われる場合にはいつでもご相談ください。

ダイゴペットクリニックの夜間対応について

 

放置で悪化しやすい腹部膨満【緊急度・中】

今すぐには命に直結しない場合でも、放置すれば進行して命を脅かす病気があります。
早めの受診が望ましいケースをご紹介します。

 

<腹腔内腫瘍(脾臓・肝臓など)>
脾臓や肝臓の腫瘍が大きくなって腹部が膨らむケースです。
破裂すれば出血やショック状態を起こすこともあり、定期的な超音波検査での早期発見が鍵になります。

犬の脾臓腫瘍についてはこちらで解説しています

 

<便秘・巨大結腸症>
特に猫に多く、便が詰まって腸が膨らむ病気です。
放置すると慢性的な排便障害になることがあります。

犬猫のうんちトラブルについてはこちらで解説していますについてはこちらで解説しています

 

<クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)>
腹筋が弱くなり、お腹が垂れ下がって膨れて見える病気です。
多飲多尿や脱毛、皮膚の薄さなどを伴うことが多いです。内分泌疾患はホルモン検査を行い
早期発見することが大切です。

犬のクッシング症候群についてはこちらで解説しています

 

<寄生虫感染・慢性消化器疾患>
寄生虫疾患でもお腹が膨れることがあります。
また、慢性的な消化器疾患でも腸内ガスの増加や炎症で膨満感が生じることがあります。
便の検査や血液検査で原因を特定し、適切な駆虫や食事管理が大切です。

 

生理的な膨満と病的膨満の見分け方【緊急度・低】

もちろんすべてのお腹のふくらみが病気というわけではありません。
中には様子を見ても問題ない「生理的な膨満」も存在します。

 

<様子を見てもよいケース>
肥満による体型変化:触っても柔らかく、張りや痛みはありません。ダイエットが必要になりますが緊急性は高くありません。
妊娠(交配歴がある場合):妊娠後期になると腹部が膨らみます。繁殖をする場合は定期的な健診で確認を行いましょう。
子犬・子猫の軽い膨満:食後の一時的な膨満や腸内ガスの影響が考えられます。

 

<病院へ行くべきサイン>
一方で、これらの症状がある場合は、自己判断せず、早めの受診が安全です。

・お腹が硬く張っている/痛がる
・呼吸が荒い/ぐったりしている
・数日経っても膨らみが引かない
・食欲が落ちている/嘔吐がある

判断に迷ったら即受診」を合言葉として覚えておいてください。

 

動物病院で行う検査と診断の流れ

腹部膨満の原因はひとつではありません。そのため、「どうして膨らんでいるのか」を正確に突き止めることが治療の第一歩です。

動物病院では次のような検査を行います。
触診:お腹の硬さ・痛み・しこりの有無を確認。
血液検査:肝臓・腎臓・ホルモン・炎症などの異常を調べます。
レントゲン検査:ガスや液体の貯留、臓器の位置関係などを確認。
超音波検査:腹腔内の臓器構造や腫瘍・腹水の有無を確認。

 

<腹部膨張時のCT検査>
さらに、CT検査によってより詳細に原因を特定することが可能です。
ダイゴペットクリニックでは高精度CTを用いた画像診断に大きな強みがあり、腫瘍や内出血、臓器異常などを迅速に把握できます。

ただし、すべての症例でCTが必要なわけではありません。獣医師が検査の結果をもとに、「より詳しく確認が必要」と判断した場合に限って選択的に実施します。
早期に原因を突き止めることで、適切な治療方針を立てることができ、結果として救命率の向上や早期回復につながるのです。

CT検査についてはこちらで解説しています

 

まとめ|お腹のふくらみは早めの相談が安心

犬や猫のお腹が膨らんで見えるとき、それが一時的なものなのか、危険な病気のサインなのか、見分けるのは簡単ではありません。
この記事では病的と生理的なお腹の膨れ方の見分け方を簡単に紹介しましたが、判断に迷ったらすぐに動物病院にお越しください

腹部膨満の多くは、早期の診断と治療で改善できる可能性があります。
ダイゴペットクリニックでは、CTを含む高度な画像診断設備と経験豊富な獣医師による丁寧な診察で、原因を正確に見極め、最適な治療をご提案しています。
不安なときは、「様子を見よう」ではなく、「少し相談してみよう」と思っていただけたら幸いです。

 

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※記事作成当時のエビデンスに基づくもので最新のものと異なる可能性があります。