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犬と猫の耳道切除術について|外耳炎に対する治療の最終手段

外耳炎や耳の腫瘍など、犬や猫の耳の病気が悪化してしまうと、お薬だけでは対応できず手術をする場合もあります。その中の1つが耳道切除術です。

動物の耳は外側から、耳介、外耳道(耳道:垂直耳道と水平耳道)、鼓膜、中耳、内耳に分かれていますが、耳道切除術では耳道を一部あるいはすべて取り除くことで、根治が期待できます。ただし、耳という狭くて繊細な領域にメスを入れるので、いくつかリスクがあることも事実です。

今回は手術方法を簡単に説明するとともに、どのような病気に対して行われるのか、またメリット・デメリットについてもお伝えします。

耳道切除術が適応される病気

耳道切除術は以下のような病気に対して行います。

慢性外耳炎
初期の外耳炎であれば点耳薬で対応できますが、炎症が長期にわたって続いたり、重度の外耳炎になったりすると、内科治療に反応しなくなってしまいます。
猫では比較的まれですが犬では多く、特にコッカー・スパニエルでは重症化しやすいことが知られています。

耳道内のポリープや腫瘍
まれですが耳道内に腫瘤(しこり)が発生することがあります。良性・悪性ともに発生する可能性がありますが、特に猫では悪性腫瘍が多い傾向があります。
耳道が塞がれることで聴覚に影響を及ぼすため、耳道切除術が有効です。

 

手術内容

耳道切除術は切除部位によって、以下の4つに分かれます。

外側耳道切除術:耳道の外側だけ切開することで、換気や排液がスムーズになる。
垂直耳道切除術:垂直耳道を切除することで、耳道の一部を残しつつ病変を取り除ける。
全耳道切除術:耳道をすべて切除する。炎症が中耳にまで及んでいる場合は、全耳道切除術にあわせて鼓室胞骨切り術が必要な場合もある。
鼓室包骨切り術:感染症や他の問題によって影響を受けた骨や組織を取り除きます。

また、基本的な手術の流れは以下の通りです。
1.耳の下の皮膚を切開して、耳道にアプローチする。
2.周りの皮下組織や神経を避けながら、耳道そのものが見えるようにする。
3.耳道部分を一部あるいはすべて切断して、耳介を残しながら、残った耳道部分と皮膚をつなぎあわせる。

 

耳道切除術のメリット・デメリット

耳道切除術には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット
内科治療では治らない耳の病気でも対応でき、痛みや炎症を抑えることで生活の質(QOL)を向上できる。
耳介はそのまま残せるので、外見上の変化を最小限にできる。

デメリット
・術後には、顔面神経麻痺、ホルネル症候群、内耳神経麻痺、聴覚障害など、さまざまな合併症が起こる可能性がある。

 

まとめ

耳道切除術は外耳炎に対する治療の最終手段ともいえます。
外耳炎は犬ではとても一般的な病気で、発生初期であれば点耳薬などの内科治療で対応できますが、再発を繰り返すなど悪化してしまうと、手術することを選択しなくてはいけなくなりますので、耳の様子がおかしいと感じたら早めにご来院ください。

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※記事作成当時のエビデンスに基づくもので最新のものと異なる可能性があります。

 

<参考文献>

Richard G.Harvey, Gert ter Haar.  犬と猫の耳鼻咽喉疾患. 嶋田照雅 監訳. 2020. 緑書房.