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犬と猫の椎間板ヘルニア|症状、治療法、手術の選び方を解説

犬や猫に多く見られる神経の病気の一つに椎間板ヘルニアがあります。この病気は、椎間板が脊髄を圧迫することで起こり、歩行時にふらつきや、足の動きが不自然になるなどの神経症状が見られるのが特徴です。
治療法は大きく分けて、内科療法と外科療法の2つに分かれますが、特に重症度が高い場合には手術が必要になります。

今回は、犬と猫の椎間板ヘルニアにおける手術法について、具体的な外科的治療の内容をわかりやすく解説します。

椎間板ヘルニアとは

椎間板ヘルニアは、背骨(椎骨)と背骨の間にある椎間板が変性し、脊髄を圧迫することで発症する病気です。この病気は、圧迫される部位によって症状が異なり、首に近い部分で発生した場合は頸部椎間板ヘルニア、背中や腰の部分で起こる場合は胸腰部椎間板ヘルニアと呼ばれます。

さらに、椎間板が変性するタイプによって「ハンセンⅠ型」と「ハンセンⅡ型」の2種類に分けられます。

<ハンセンⅠ型>
遺伝的な要因が関与しているとされ、特にミニチュア・ダックスフンドに多く見られることが特徴です。
このタイプは比較的若い年齢(中齢未満)で突然発症するケースが多く、元気だった犬や猫が急に痛みを感じて動けなくなることがあります。

<ハンセンⅡ型>
加齢に伴って徐々に発症するため、主に高齢の動物で見られます。時間をかけて進行するため、少しずつ歩き方に違和感が出てきて、動きが鈍くなっていくことが特徴です。

 

症状と治療の判断基準

症状は、痛みふらつきから始まります。さらに、進行すると手足の麻痺が見られ、動かすことが難しくなり、歩行困難に陥ることも少なくありません。

軽度の場合は、痛み止めや安静にすることで症状が緩和されることもありますが、内科的な治療では改善が見られないケースや、症状が重度の場合は手術が必要になります。

 

椎間板ヘルニアの手術法

犬や猫の椎間板ヘルニアに対しては、病態や圧迫の部位に応じてさまざまな手術法が用いられます。以下に代表的な手術法を詳しくご紹介します。

<片側椎弓切除術(ヘミラミネクトミー)>
背中側からメスを入れ、椎骨の一部である椎弓を片側だけ切除して、脊髄までアプローチします。その後、脊髄を圧迫している椎間板物質を取り除くことで、神経の負担を軽減します。この手術は、椎間板が横方向に飛び出している場合に適用される術式です。

<小範囲片側椎弓切除術(ミニヘミラミネクトミー)>
片側椎弓切除術の一種ですが、より小さな範囲での切除を行います。この方法は、脊髄や周辺組織への損傷を最小限に抑え、手術後の椎骨の安定性も保てるとされています。
外科的負担が少ないため、回復期間の短縮も期待できる術式です。

<部分片側椎体切除(ラテラルパーシャルコルペクトミー)>
この手術はハンセンⅡ型に対して特に有効です。椎弓の一部を切除して余白を作り、これ以上脊髄への圧迫が進まないようにします。
ハンセンⅡ型の場合、発症から時間が経過して脊髄と椎間板物質が癒着していることが多いため、すべての圧迫物質を取り除くのが難しいことがあります。このため、圧力の逃げ道を確保することが目的となります。

<腹側減圧術(ベントラルスロット)>
この術式は首の腹側(前面)からアプローチし、椎骨にスロット(穴)を開けて脊髄の圧迫を軽減する方法です。
明確に一か所で強い圧迫が確認されている場合に適用され、特に頸部椎間板ヘルニアでは最も優先される選択肢となります。

<背側椎弓切除術(ドーサルラミネクトミー)>
背中側からメスを入れ、椎骨の一部(椎弓と棘突起)を取り除くことで脊髄への圧迫を軽減します。特に、複数箇所にヘルニアが発生している場合や、神経の広範囲に渡る圧迫が見られるケースで実施されます。

 

椎間板ヘルニアの症状から見るグレードと予後について

こちらの表は、胸腰部椎間板ヘルニアにおける症状の重症度(グレード)と治療法別の予後をまとめたものです。
胸腰部椎間板ヘルニアは、症状の進行に応じてグレード1から5に分類され、重症度が上がるほど改善が難しくなります。特に重症度が高いグレード4以上では、外科療法がより効果的であることがわかります。

 

こちらの表は、頸部椎間板ヘルニアのグレードごとに見られる症状と、予後(回復率や回復までの期間)をまとめたものです。
症状の進行に応じてグレード1から3に分類され、重症度が増すほど回復が難しくなる傾向があります。

 

術後のケア

手術を終えたばかりの犬や猫は、体への負担やストレスが大きいため、まずは入院して安静を保つことが必要です。手術前の症状が重かった場合や長期間にわたる圧迫があった場合には、回復に時間がかかることもあるため、一頭一頭に合ったペースでケアを行っていきます。

退院後も、激しい運動は避け、まずは体を少しずつ動かしていく軽いリハビリから始めることが大切です。
初めは手足の曲げ伸ばしなど、負担の少ない動きをサポートし、動物の様子を観察しながら徐々に運動の範囲や強度を増やしていきます。飼い主様と一緒に過ごす時間が増えることで、犬や猫も安心し、回復を促すことが期待できます。

椎間板ヘルニアは、再発のリスクがあるため、退院後も細かな観察が欠かせません。歩き方が不自然になり、痛がる素振りが見られた場合は、すぐに動物病院にご相談ください。
また、日常生活では無理な動きや高い場所からの飛び降りを防ぐ工夫も大切です。フローリングなどの滑りやすい場所では、滑り止めマットを敷いて足腰への負担を減らすと良いでしょう。

 

まとめ

椎間板ヘルニアは、特に犬に多い神経の病気で、首や背中の痛み、手足の麻痺などの症状を引き起こします。進行すると日常生活にも大きな影響を及ぼすため、早期の診断と適切な治療が重要です。治療法にはいくつかの選択肢があり、内科的治療で改善しない場合には、外科療法(手術)が検討されます。手術の術式は多岐にわたり、原因や発症した部位に応じて適切な方法を選ぶことが成功への鍵となります。

大切な動物の健康を守るためにも、小さな異変を見逃さないことがポイントです。愛犬・愛猫の様子に違和感があれば、早めに動物病院を受診しましょう。

 

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※記事作成当時のエビデンスに基づくもので最新のものと異なる可能性があります。