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犬と猫の悪性黒色腫について|定期的な健康診断で早期発見

悪性黒色腫(メラノーマ)は、メラニン細胞という色素を産生する細胞が無秩序に増殖することで発生する悪性腫瘍(がん)です。猫では比較的まれですが、犬の口の中で発生することが多く、非常に悪性度が高いことで知られています。

今回は犬と猫の悪性黒色腫(メラノーマ)について、特に診断方法や治療の選択肢を中心に解説します。

症状

悪性黒色腫(メラノーマ)の症状を部位別に紹介していきます。

口腔内メラノーマ
舌や歯茎などに腫瘤(しこり)ができることで、食べ物や水をうまく飲み込めなくなる、口から血が出る、よだれが出る、といった症状が現れます。
こうした症状は歯周病とも似ているため、気づかない間に進行しているケースもあります。
しこりが大きくなると、口を開けたときに赤黒い(あるいはピンク色の)ものが見えることもあります。

皮膚のメラノーマ
頭部及び四肢に多く発生する傾向にあります。
ほくろのような目立たないものから、急速に成長する大きなものまで様々です。多くの皮膚メラノーマは良性ですが、爪の下部(爪床)のメラノーマは例外であり、悪性化する可能性があります。

眼のメラノーマ
眼球にできる悪性黒色腫はブドウ膜(虹彩、毛様体、脈絡膜)に発生し、犬では転移することはまれですが猫では他の臓器に転移しやすい傾向があります。また、腫瘤ができることにより眼圧が上昇し二次的に緑内障や、眼内出血を起こすことがあります。
眼の痛みや違和感のため、擦り付けたり掻いたりすることで角膜を傷つける可能性もありますので注意が必要です。

 

原因

詳しい原因はわかっていませんが、メラニン細胞が癌化することで発生します。また、犬と猫ではその特徴が少し異なっています。

犬では高齢(10歳以上)の小型犬に多く、ミニチュア・ダックスフンド、ミニチュア・シュナウザー、トイ・プードルなどでよくみられます。口の中で最も頻繁に発生し、口腔内の悪性腫瘍のうち30~40%を占めるともいわれています。ただし、それ以外にも指先や目の中に現れることもあります。

猫では発生自体がそれほど多くありませんが、高齢の個体にみられます。犬と違って口腔内にできることは少なく、ほとんどは頭部や鼻の皮膚に発生します。また、目の中に認められる場合もあります。

 

診断

外から観察できる場所にしこりがある場合は、細胞診検査(しこりに針を刺して細胞を一部採る検査)や病理検査(しこりごと切除して組織を観察する検査)を実施します。口の中にできている場合は、口を大きく開けて観察します。

注意が必要なのは、細胞診検査だけでは診断に結び付かないということです。悪性黒色腫の腫瘍細胞は様々な形をして、メラニン色素をもっていないものも存在します。そのため、しっかりと診断して治療方針を固めるためには、麻酔下でしこりを取り除き、病理検査で組織への浸潤性や転移の有無を調べる必要があります

病理検査では、黒いメラニン色素を豊富にもつ赤黒いしこりであれば、通常の方法でも判断できますが、メラニン色素が少ない(あるいはほとんどない)ピンク色のしこりに対しては、免疫染色と呼ばれる特殊な手法で判断します。

 

治療 

悪性黒色腫に対する治療法は、手術、化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療の3つに分かれます。現在では手術が最も効果的な選択肢とされていて、発生初期に完全に切除できれば、その後も長生きできる可能性が高くなります

しかし、発生した場所によっては完全に取り切れなかったり、すでに肺やリンパ節に転移したりしている場合もあります。また、口の中にできた場合は下顎を切除する必要があるため、術後の生活の質(QOL)を大きく落としてしまう可能性もあります。

飼い主様にはこれらの情報をお伝えして、根治を希望される場合は手術と化学療法や放射線治療を組み合わせたプランをご提示します。一方で、検査結果から肺やリンパ節への転移が疑われる、あるいは積極的な治療を希望されない場合には、痛みを和らげる放射線治療や鎮痛剤による疼痛管理を主とした緩和療法の実施をご提案します。

放射線治療について

 

予防法

発生原因が明らかになっていないので、予防は困難です。小型犬を飼育されている場合は、定期的に口の中の様子を確認することで、早期に発見できる可能性があります。

 

まとめ

悪性黒色腫は特に高齢の小型犬で問題になるがんです。口の中にできると気づきにくく、来院されるときには手遅れになってしまうケースもあるため、早期発見・早期治療に努めましょう。

 

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※記事作成当時のエビデンスに基づくもので最新のものと異なる可能性があります。

 

<参考文献>

Feline Uveal Melanoma Review: Our Current Understanding and Recent Research Advances – PMC (nih.gov)

The Molecular Basis of Canine Melanoma: Pathogenesis and Trends in Diagnosis and Therapy – Modiano – 1999 – Journal of Veterinary Internal Medicine – Wiley Online Library