犬の前十字靭帯断裂整復術について|前十字靭帯断裂の治療法の1つ
以前の記事で、犬の前十字靭帯断裂という病気について解説しましたが、今回はその治療法、特に手術の手法である前十字靭帯断裂整復術に焦点を当ててご紹介します。
前十字靭帯は一度断裂してしまうと自然には修復されません。痛みを和らげるための内科療法も存在しますが、それだけでは完治には至らないため基本的には手術が必要になります。
今回の記事を読んでいただき、手術に関する知識をつけていただくとともに、信頼できる動物病院での手術をご検討ください。
目次
前十字靭帯断裂とは?
前十字靭帯断裂とは、膝の関節を支えている靭帯が何かの拍子に切れてしまう病気で、大型犬・小型犬ともに発症します。
特に小型犬では、膝蓋骨内方脱臼(いわゆるパテラ)に続いて発症するケースが多いので、若い頃でも注意が必要です。
治療法の選択肢
治療方法には内科治療と外科治療の二つの主な選択肢があり、犬の状態や獣医師の診断に基づいて選ばれます。
<内科治療>
内科治療は主に生活の質(QOL)の改善を目的としています。
通常、発症初期には1ヶ月程度の絶対安静と痛み止めの薬、関節用のサプリメントの服用が選択されます。
発生初期には、まずはこのような対応で症状の改善を試みますが、前十字靭帯断裂は薬だけで解決できる病気ではないため、多くの場合、最終的には外科的治療が必要になることが一般的です。
<外科治療(前十字靭帯断裂整復術)>
外科治療は膝関節の安定化を図り、運動機能の改善を目指します。
前十字靭帯断裂整復術には、犬種や症状の重症度に応じていくつかの手法があります。代表的な手法として、関節外制動法(ラテラル・スーチャー法)、TPLO法(脛骨高平部水平化骨切り術)、TTA法(脛骨粗面前進化術)があります。当院では特にTPLO法を多く採用しています。
・TPLO法(脛骨高平部水平化骨切り術)
TPLO法は、中〜大型犬に多く適用されますが、近年では小型犬に対しても積極的に実施されるようになっています。
この手術では、脛骨が前方に移動することによって膝の安定性が失われるのを防ぐために、脛骨の一部(脛骨高平部)を切って回転させることで、角度を調整します。
これにより脛骨が前に出にくくなり、膝の安定性が向上します。
手術後は、骨が完全に癒合するまで約2〜3ヶ月の期間、激しい運動は避ける必要があります。適切なリハビリテーションと経過観察を行うことで、犬は以前のように走ったり、ジャンプしたりと、活動的な生活を取り戻すことができるようになります。
・関節外法(ラテラル・スーチャー法)
前十字靭帯が断裂した際に、その機能を人工的に補うための手術です。この手術では、ファイバーワイヤーなどの非常に強力な糸(人工靭帯)を使用し、大腿骨の下端にある種子骨と脛骨に穴を開け、その糸を輪のように通して靭帯の役割を果たし、膝関節を安定させます。
この方法は、人工靭帯によって一時的に関節を安定化させ、その間に周囲の組織が自らの力で安定するのを待ちます。
メリット | デメリット | |
TPLO法 | ・早期の回復が望まれる
・手術後の骨関節炎の進行がより軽度である ・再発しにくい |
・骨を切る手術
・特殊な手術器具が必要 |
関節外法 | ・骨を切らない手術
・手術時間が短くて済む |
・術後の関節炎の進行が止まらないため痛みが継続する
・糸が切れて再発する可能性がある |
術後のケア
手術直後はご自宅で安静にしていただき、患部の回復を待つことが大切です。
その後は、必要に応じて無理のない範囲でリハビリを始め、少しずつ歩くための筋肉をつけていきましょう。
また、膝の関節に余計な負担をかけないためには、体重管理が非常に重要です。肥満にならないように注意し、フローリングには滑りにくいマットなどを敷いて安全を確保することもポイントです。
まとめ
前十字靭帯断裂整復術は、靭帯の断裂によって不安定になった膝の関節を安定化させるための手術です。
手術のメリットやデメリット、そして術後のケアについてご不安な点がございましたら、どうぞお気軽に当院の獣医師までご相談ください。
■当院で行っている整形外科の手術はこちらで解説しています
・犬と猫の膝蓋骨脱臼整復について|膝蓋骨脱臼の治療法の1つ
・犬と猫の大腿骨頭切除術について|脱臼や骨折の治療法の1つ
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※記事作成当時のエビデンスに基づくもので最新のものと異なる可能性があります。