犬や猫の「ステロイド」治療|効果と副作用を正しく理解して、安心して付き合うために
ステロイドは、さまざまな症状や病気の治療に用いられる、とても効果的なお薬ですが、一方で「副作用が心配で不安」と感じていらっしゃる飼い主様も少なくありません。
実際、ステロイドには炎症を抑えるなどの強い効果がある反面、使い方によっては注意が必要な面もあります。そのため、きちんと理解したうえで治療にのぞむことが大切です。
今回の記事では、犬や猫にステロイド治療が行われる際に、飼い主様が知っておきたい基本的な知識について解説します。
目次
ステロイドとは?
ステロイドは、正式には「副腎皮質ホルモン剤(合成ステロイド)」と呼ばれるお薬です。
このお薬は、「副腎(ふくじん)」という臓器から自然に分泌されるホルモンのひとつ、「糖質コルチコイド」とよく似た働きをするように作られています。
糖質コルチコイドには、人間や犬・猫の体の中で、さまざまな重要な役割があります。たとえば、エネルギーの代謝を助けたり、炎症を抑えたり、免疫の働きが過剰にならないように調整することで体のバランスを保っています。
こうした効果を応用して、ステロイドは人の医療だけでなく、犬や猫の治療にも幅広く使われています。
ステロイドが使われる代表的な病気
ステロイドは、その強力な抗炎症作用や免疫調整の効果から、犬や猫のさまざまな病気に使われています。
実際には、以下のような病気や症状に対して処方されることがあります。
◆アレルギー性皮膚炎や外耳炎
かゆみや炎症を抑える目的で使われることがあります。
▶️食物アレルギーについてはこちらで解説しています
▶️外耳炎についてはこちらで解説しています
◆猫喘息
呼吸が苦しくなる発作を和らげるため、気道の炎症を抑える治療に使われます。
◆炎症性腸疾患
腸に慢性的な炎症が起きる病気で、下痢や嘔吐を繰り返す症状に対して使われることがあります。
◆自己免疫疾患(免疫介在性溶血性貧血など)
自分の免疫が体を攻撃してしまう病気に対し、免疫反応をコントロールするために使用されます。
◆痛みや炎症を伴う病気(関節炎、椎間板ヘルニア、口内炎など)
関節炎や椎間板ヘルニア、口内炎など、痛みや炎症が強い病気にも効果が期待できます。
◆がん(リンパ腫など)の補助療法
直接的な治療だけでなく、がんに伴う炎症や免疫反応を抑える目的でも使われます。
このように、ステロイドは幅広い病気に対応できるお薬であり、多くの治療現場で活躍しています。
ステロイドのメリットと効果
ステロイドには、犬や猫の治療において頼もしい効果がいくつもあります。ここでは、代表的なメリットをいくつかご紹介します。
◆強力な抗炎症作用
ステロイドは、炎症を抑える力がとても強いお薬です。そのため、かゆみや痛みなどのつらい症状をすばやく軽減できるのが大きな特徴です。
すぐに効果が現れることも多く、症状の悪化を防ぐのにも役立ちます。
◆ストレスの軽減につながる
強いかゆみや痛みは、犬や猫にとって大きなストレスになります。ステロイドを使ってそうした不快な症状を和らげてあげることで気持ちが落ち着き、結果として治療がスムーズに進むこともあります。
◆短期間の使用でも症状が改善することがある
ステロイドは長期間の使用には注意が必要ですが、症状によっては短期間の投与だけでも大きく改善が見られることがあります。特に、急に症状が強く出た場合などには、治療の選択肢としてとても有効です。
気になる副作用とは?
ステロイドは効果の高いお薬ですが、その一方で「副作用」が出ることもあるため、使用には注意が必要です。
実際に、以下のような変化が見られることがあります。
・食欲が増える
・水をたくさん飲み、おしっこの量が増える(多飲多尿)
・傷の治りが遅くなる
・筋肉量が減る
・皮膚が薄くなる、毛が抜けやすくなる
・長期間の使用によって、肝臓や副腎の機能が低下することがある
・感染症に対する抵抗力が落ちる など
このような副作用が心配で、飼い主様の判断でお薬の使用をやめてしまうことがありますが、それはとても危険です。ステロイドを急に中止すると、かえって症状が悪化してしまうことがあります。
いつもと違うと感じる変化があった場合は、決して自己判断せず、まずはかかりつけの動物病院に相談しましょう。
安心して使うためのポイント
ステロイドは効果がしっかり現れるお薬である一方、副作用にも注意が必要ですが、正しく使えばリスクを最小限に抑えながら安全に治療を続けることができます。
以下のポイントを意識しておくと、より安心してステロイドと向き合うことができるでしょう。
✅必要な量を、必要な期間だけ使う
以前のお薬が余っていたとしても、自己判断で与えることは避けましょう。また、症状がよくなったからといって、勝手に投与をやめるのも危険です。処方されたとおりの量と期間を守ることが大切です。
✅犬・猫の状態に合わせて、投与量や投薬スケジュールを調整する
症状が落ち着いてきた場合、ステロイドの量を少しずつ減らしたり、ほかのお薬に切り替えたりすることもあります。こうした調整は必ず獣医師と相談のうえで行いましょう。
✅定期的な血液検査や診察を受け、副作用の有無を確認する
見た目にはわからない体の変化も、血液検査などで早めに発見できることがあります。定期的に動物病院でチェックしてもらうことで、副作用が出た場合もすぐに対応できます。
動物病院では、犬や猫の体調や生活環境に合わせて、ステロイドの種類や量を慎重に決めています。ただし、同じお薬でも個体差によって反応が異なることがあり、思わぬ副作用が現れるケースもあります。
「いつもと様子が違うかも」「このまま続けて大丈夫かな?」と不安に思うことがあれば、迷わず早めにかかりつけの動物病院にご相談ください。
まとめ|ステロイドと上手に付き合うために
ステロイドは、さまざまな病気や症状に効果を発揮するとても頼りになるお薬ですが、安心して使い続けるためには、ステロイドの働きや使い方、副作用について正しく理解しておくことが大切です。
自己判断でお薬をやめたり、量を変えたりすることは避け、必ず獣医師の指示に従ってください。
また、治療中に「ちょっと元気がない」「食欲が落ちたかも」といった小さな変化でも、気づいたことがあれば早めに動物病院に伝えるようにしましょう。
飼い主様の気づきが、犬や猫の健康を守る大きな力になります。
ステロイドと正しく向き合いながら、これからも安心して治療を進めていきましょう。
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