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DAIGO PET CLINIC

犬が急に歩けなくなる・足を引きずる原因は?考えられる病気と応急処置

「さっきまで元気だったのに、急に足を引きずり始めた」
「突然、後ろ足が動かなくなった」

突然犬の歩き方に変化が見られると不安になりますよね。
歩行異常は捻挫(ねんざ)のような軽症から命に関わる疾患まで幅広く、その中には時間との勝負になるケースもあります。

この記事では、症状の見極め方と初期対応の指針をわかりやすくまとめました。落ち着いて確認していきましょう。

犬が足を引きずる・歩けなくなるのは危険?緊急性の判断ポイント

最初に見極めたいのは「今すぐ受診が必要かどうか」です。次のようなサインを参考にしてください。

<今すぐ受診【緊急度・高】>
完全な麻痺(動かせない)
激しい痛み
意識低下
元気消失
ぐったりしている
呼吸が荒い
血尿・黒い便
体温の異常(高熱・低体温) など

<数時間〜半日以内に受診【緊急度・中】>
・徐々に悪化している軽度な引きずり
・限定的な痛みだが、散歩後などに悪化するパターン
・発熱はないが食欲がない など

<自宅で様子見【緊急度・中~低】>
・一時的な軽度の跛行(びっこ)で、すぐに治まる
・遊んでいるうちに少し足をついたがすぐに元気になった など

このようなケースであっても翌日にはかかりつけ医へ相談するのが安心です。

歩行の変化は放置することで重篤化するリスクがあります。「少し様子を見てから」という判断が、治療のタイミングを逃すことにつながりかねません。不安な症状が見られたら、まずはかかりつけの動物病院に電話で状況を相談していただければと思います。

 

緊急度が高い症状の見極め

ここでは、緊急度が高い症状をより詳しく解説します。以下に該当する場合は自己判断での様子見は危険です。夜間・休日は救急病院に連絡しましょう。

<後ろ足が突然動かない(椎間板ヘルニアの疑い)>
特に数時間以内の緊急手術が必要になることがあります。神経の圧迫が続くと、神経が不可逆的なダメージを受けてしまい元に戻らなくなるリスクが高まります。

椎間板ヘルニアについてはこちらで解説しています

<痛みで一歩も立てない・激しく鳴く(骨折/脱臼/靱帯断裂の疑い)>
骨折、重度の脱臼や靱帯断裂は激痛を伴います。患部を動かすことでさらに状態が悪化する恐れがあり、一刻も早い整復が必要です。

<下半身麻痺・排尿困難の疑い>
麻痺の重症化に加え、自力で排尿できない状態は、膀胱の損傷や腎機能への影響など、命に関わる二次的な問題を引き起こすことがあります。

<高齢犬でふらつき+首の傾き(前庭疾患の疑い)>
急に頭が傾き(斜頚)、眼球が左右に揺れる(眼振)、グルグル回るなどの症状を伴う場合、平衡感覚を司る脳の前庭に異常がある可能性が高いです。
緊急性は高いですが、早期に適切な治療を行うことで改善することも多いので、落ち着いて対応しましょう。

<歩くとよろけて倒れる(内科疾患・貧血・低血糖の疑い)>
足の痛みではなく、全身の倦怠感や脳の異常でフラフラしている状態です。特に、低血糖は命の危険があるため、迅速な対応が必要です。
「大丈夫だろう」とご自身で判断せず、専門家の判断を仰ぐことが、飼い主様ができる最善の行動になります。

ダイゴペットクリニック(豊田中央医療センター)は夜間救急診療も対応しています。深夜早朝の場合も電話対応を実施していますので、このような症状が見られた場合にはいつでもご相談ください。

ダイゴペットクリニックの夜間対応について

 

考えられる原因とリスク要因

日常のちょっとしたケガから病気が関係しているものまで、歩行異常の主な原因は大きく4つに分けられます。

<整形外科系>
骨折・脱臼・靭帯断裂、小型犬に多い膝蓋骨脱臼(パテラ)、大型犬に多い股関節形成不全などが代表的なケガです。
外力や繰り返す負担、体格・体重、加齢が関与します。

膝蓋骨脱臼についてはこちらで解説しています

<神経系>
後ろ足から動かしづらくなる椎間板ヘルニアをはじめとして脊髄疾患も歩行に影響を与えます。
ダックスフンドやコーギーなど胴長犬種に多く、急な麻痺や強い痛みを伴いやすいのが特徴です。放置すると回復が難しくなることがあります。

<加齢・慢性疾患>
変形性関節症、腫瘍、筋力低下などシニア犬に発症しやすい症状です。
進行は緩やかでも、痛みや違和感で散歩を嫌がる、立ち上がりに時間がかかるといった変化が見られます。

シニア期の症状についてはこちらで解説しています

<内科疾患>
貧血・低血糖・感染症・代謝疾患(例:甲状腺機能低下症)などで、足そのものに異常がなくてもふらつきます。全身のだるさや食欲低下を伴いやすい点が手がかりです。

犬の甲状腺機能低下症についてはこちらで解説しています

 

家庭でできる応急対応と絶対にしてはいけないこと

まずは動物病院へ向かうまでの間に、症状を悪化させないための安全な対応を取ることが重要です。ここでは、家庭でもできる応急処置と注意点をまとめます。

<応急処置>
いざというときは焦ってしまいがちですが、適切な応急対応を知っておくことで落ち着いて行動できます。

落ち着いて安静にさせる
犬がこれ以上動いて患部を悪化させないよう、サークルやクレートなど、狭い場所で絶対安静にしてください。興奮させないよう、優しく声をかけ、静かに見守りましょう。

患部の観察と記録
どこを痛がっているか、足のどの部分を引きずっているか、腫れや熱はあるか、などを観察します。
可能であれば、症状が出た直後の様子を動画で撮影しておくと、診察時に獣医師が状況を把握しやすくなります。

移動の方法(抱き方・スリングの活用)
抱き上げる際は、体全体を支えるように、患部に負担をかけないように注意深く行ってください。後ろ足が動かない場合は、タオルやバスタオルを胴体の下や後ろ足の付け根に通し、ハンモック状にして支えながら抱き上げると安全です。

小型犬の場合は、キャリーバッグやスリングに柔らかいタオルを敷いて平らな場所に寝かせた状態で運びます。
特に重度の椎間板ヘルニアが疑われる場合は、胴体が曲がらないよう、担架のように平らな台(厚めの板など)に乗せて運ぶのが理想的です。

<犬へのNG行為>
間違った処置は症状を悪化させるだけでなく、命に関わる危険を伴うこともあります。次のことは絶対に行わないでください。

自己判断で鎮痛剤や人間の薬を与える
人間の風邪薬や痛み止めには、犬にとって中毒性のある成分(アセトアミノフェンなど)が含まれていることが多く、命に関わる危険があります。
また、動物用の薬であっても、原因を特定せずに使用すると、症状を隠してしまい、正確な診断を妨げることになります。絶対に自己判断で薬を与えないでください。

患部を強く揉んだり、無理に引っ張る
骨折や脱臼の場合、ご自身でマッサージや曲げ伸ばしをすると、血管や神経を傷つけ、状態を悪化させる危険性があります。

添え木固定を自己判断で行う
骨折が疑われる場合でも、適切な知識と道具がなければ、添え木はかえって患部を刺激し、痛みを増す原因になります。病院に到着するまで、無理な固定はせず、安静を保つことを最優先にしてください。

「冷やす/温める」を自己判断で決める
急性の炎症や腫れがある場合は冷やすのが基本ですが、慢性的な関節炎や血行不良が原因の場合は逆に温める方が良い場合もあります。自己判断が難しい場合は行わず、病院に到着してから獣医師の指示に従いましょう。

 

動物病院で行う検査と治療

診療は問診と触診から始まります。発症時刻・きっかけ・既往歴・ワクチン・食事や排泄の変化などを伝えましょう。必要に応じて以下を実施します。

・画像検査:レントゲン(骨折・脱臼・関節評価)、超音波(内臓評価)、CT/MRI(椎間板・脊髄・軟部の精査)
・神経学的検査:反射や深部痛覚の有無で障害部位を推定します。
・血液検査:貧血・低血糖・炎症・臓器機能を確認し、内科疾患を鑑別します。

<治療の方法>
治療は原因や症状によって様々です。

・骨折や重度脱臼、靭帯断裂:手術や固定、安静管理が中心です。
・椎間板ヘルニア:内科管理(鎮痛・消炎・ケージレスト)で改善することもありますが、麻痺が進む場合は外科手術が早期回復の鍵になります。
・変形性関節症などの慢性疾患:体重管理、関節ケア、適切な運動やリハビリ、サプリメントの併用が再発予防に役立つでしょう。

当院では愛犬の状態や環境を踏まえて、それぞれに合った治療をご提案いたします。安心してご相談ください。

 

まとめ|歩行異常は放置せず早めの受診を

足の引きずりや歩けない状態は、体からの重要なサインです。軽く見えても、放置すると回復が遅れ、後遺症が残るリスクがあります。
特に急な麻痺や強い痛みを伴うときは、時間が予後を左右します。迷ったら自己判断を避け、まずは動物病院へ連絡してください。

また、予防や生活面の工夫も大切です。
フローリングには滑り止めマットを敷く
段差の上り下りを減らす
無理のない運動で筋力を保ち、適正体重を維持する

このような積み重ねが犬の健やかな生活を守ります。

歩き方の変化は毎日一緒に過ごしている飼い主様だからこそ気づける大切なサインです。
日々の健康維持から緊急事態まで、ダイゴペットクリニックに気軽にご相談ください。

 

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※記事作成当時のエビデンスに基づくもので最新のものと異なる可能性があります。