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傷が小さく痛みも少ない?|腹腔鏡で行う犬や猫の避妊・潜在精巣摘出手術のメリットとは

「手術」と聞くと、病気を治すためのものと思われがちですが、実は大切な予防の手段でもあります。犬や猫では、将来の病気のリスクを減らすために、避妊手術や潜在精巣の摘出手術が一般的に行われています。

とはいえ、「健康なのにおなかを開けるのはかわいそう」「痛みが強いのでは?」といったご不安から、手術に踏み切れずにいる飼い主様も少なくありません。

そんなときに、選択肢のひとつとしてご検討いただきたいのが、腹腔鏡(ふくくうきょう)を用いた手術です。体への負担を抑えながら、安全に手術ができる方法として、近年注目されています。

今回は、腹腔鏡で行う犬や猫の避妊手術や潜在精巣摘出手術について、従来の開腹手術との違いやメリットを解説します。

従来の開腹手術との違い

避妊手術や潜在精巣の摘出手術は、「開腹手術」または「腹腔鏡手術」のいずれかの方法で行われます。それぞれに特徴があり、どちらが適しているかは愛犬・愛猫の状態やご希望によって変わってきます。

ここでは、開腹手術と腹腔鏡手術の主な違いを、わかりやすく表にまとめました。

開腹手術と腹腔鏡手術の比較表。実施状況、術創、動物への負担、痛み、出血、回復の6項目で比較。腹腔鏡は術創が小さく痛みや出血も少なく、回復が早いとされる

同じ手術というくくりですが、こうした違いがあることを知っておくのもとても重要です。

 

腹腔鏡で行う避妊・潜在精巣摘出手術とは?

犬や猫の避妊手術や潜在精巣の摘出手術は、「開腹手術」または「腹腔鏡手術」で行われます。
腹腔鏡手術では、まず専用のカメラや器具を通すために、おなかに2〜3か所の小さな穴を開けます。そこからカメラや器具を入れて手術を行うため、おなかを大きく切る必要がありません
この方法には、次のようなメリットがあります。

・傷が小さくて済む
・術後の痛みが少ない
・出血が少ない
・回復が早い

このように、腹腔鏡は体への負担が少ない手術方法として注目されています。

また、腹腔鏡は避妊手術や潜在精巣の摘出手術だけでなく、ほかのさまざまな治療や検査にも使われています。詳しくは別の記事でご紹介していますので、ぜひそちらもご覧ください。

▶️異物摘出や臓器の検査にも対応できる腹腔鏡手術についてはこちら

 

中でも、犬や猫において腹腔鏡が特に活用されているのが、以下の2つの手術です。

避妊手術
避妊手術では、卵巣を摘出することで妊娠を防ぐだけでなく、子宮蓄膿症乳腺腫瘍といった産科系の病気を予防することができます。
また、発情期に見られる落ち着きのない行動や鳴き声などの問題行動が、やわらぐこともあります。

特に子宮蓄膿症は命にかかわることもあるため、早めの手術を検討される飼い主様も多くいらっしゃいます。

▶️子宮蓄膿症についてはこちらで解説しています

 

潜在精巣の摘出手術
潜在精巣(せんざいせいそう)とは、通常は子犬や子猫の時期におなかの中から陰嚢に下りてくるはずの精巣が、そのままおなかの中に残ってしまう状態です。
おなかの中にある精巣は、将来的に腫瘍になるリスクが高いことが知られています。

そのため、潜在精巣が見つかった場合は、できるだけ早く摘出することがすすめられています。

このように、腹腔鏡を使った手術は体への負担を抑えつつ、安全に行える方法として、治療だけでなく将来の病気を防ぐためにも役立つ選択肢のひとつです。

 

飼い主様からよくいただくご質問

腹腔鏡手術について、飼い主様から寄せられることの多いご質問と、その回答をまとめました。

Q.本当に痛みは少ないのでしょうか?
A.はい、開腹手術のように大きくおなかを切る必要がないため、体への負担が少なく、痛みも軽く済むことが一般的です。
ただし、まったく痛みがないわけではありませんので、手術時には鎮痛薬を併用して痛みの緩和を行います。
また、鎮痛薬の使用量も開腹手術に比べて少なく済むことが多く、術後の回復もスムーズです。

 

Q.手術の所要時間はどれくらいですか?
A. 個体差はありますが、腹腔鏡手術では避妊手術で30〜60分程度、潜在精巣摘出では状況により60〜90分程度が目安です。従来の開腹手術よりも手術の時間はやや長くなる傾向がありますが、術後の回復は早くなります。

 

Q.術後どのくらいで普段の生活に戻れますか?
A. 多くの場合、術後1日〜数日で元気や食欲が戻ります。抜糸も必要なく、傷も小さいため、従来の手術よりも早く普段通りの生活に戻れることが多いです。

 

Q.費用は通常の避妊手術より高いですか?
A. はい、腹腔鏡手術は専用の機器や技術を必要とするため、通常の開腹手術より費用は高くなります。ただし、術後のケアや痛み止めの量が少なく済む分、トータルで見ればメリットも多くあります。

 

Q.すべての動物が腹腔鏡手術に対応していますか?
A. 小型犬・猫では体格や年齢、病歴によっては腹腔鏡が適さない場合もあります。事前の診察で体格や内臓の状態を確認し、最適な手術方法をご提案いたします。

 

まとめ|「痛みが少ない」手術の新しい選択肢

避妊手術や潜在精巣の摘出手術は、犬・猫の健康を守るために、とても大切な治療・予防の手段のひとつです。
とはいえ、従来の開腹手術ではおなかを大きく開ける必要があるため、「うちの子に負担がかかるのでは」と手術に踏み切れずにいる飼い主様もいらっしゃるかと思います。

そんな不安をお持ちの方にこそ、腹腔鏡手術という新しい選択肢を知っていただきたいと私たちは考えています。

腹腔鏡手術に対応している施設はまだ限られていますが、ダイゴペットクリニックでは積極的に導入し、豊富な経験と設備をもとに安全な手術を行っています。

「少し気になっている」「うちの子にもできるのかな?」と感じた飼い主様は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

 

■関連する記事はこちら
おなかを開けずに手術ができる時代へ|犬や猫の体にやさしい「腹腔鏡手術」とは?

 

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※記事作成当時のエビデンスに基づくもので最新のものと異なる可能性があります。