犬の多発性骨髄腫について|愛犬の調子がよくないと思ったら受診を
多発性骨髄腫とは、造血器の悪性腫瘍の1つで、犬でまれに発生することが知られています。
何となく元気・食欲がない、ぐったりしているなど、症状だけでは判断しづらいので、動物病院できちんと検査をして、原因を突き止めることが重要です。
今回は犬の多発性骨髄腫について、よくみられる症状や診断・治療法などをまとめました。
目次
症状
腫瘍細胞の広がり具合によっても異なりますが、ぐったりして動かない、元気がない、体重が減ってきた、嘔吐・下痢がみられるなど、これといった特徴のない症状が現れます。
また血球成分に変化が現れ、赤血球が減ると貧血によってふらふらする、血小板が減ると出血が止まりにくくなる、などの症状がみられます。その他に、重度になると骨融解を起こすことから、跛行や痛みを訴えるケースもあります。
原因
詳しいメカニズムなどは明らかになっていませんが、形質細胞(免疫に関わる細胞)やその前駆体(未熟な形質細胞)が悪性化することで発症します。
また、中高齢での発症が多く、シェパードは好発犬種であるといわれています。
診断
多発性骨髄腫は外見から判断できないので、まずは血液検査や尿検査、レントゲン検査などを実施して原因を絞り込んでいきます。
血液検査では、貧血の所見や血小板数の減少が確認できます。高グロブリン血症や高カルシウム血症を認めることもあります。高カルシウム血症の原因を調べるためにPTH-rPを測定することがあります。多発性骨髄腫などの腫瘍性疾患ではPTH-rPが高値になることがあります。
また尿検査では、尿中にタンパク質が多く現れます。多発性骨髄腫ではベンスジョーンズ蛋白という特殊なタンパク質が検出されることが知られていますが、約7割は多発性骨髄腫であっても検出されないので、その判断には注意が必要です。
さらに、レントゲンやCT検査では骨が溶けている像(パンチアウト像、虫食い像)がみられることもあります。
確定診断するためには、尿中のベンスジョーンズ蛋白を調べる検査、血液中のタンパク質の種類を調べる検査、骨髄穿刺をし、骨髄細胞の評価をする検査などを追加で行います。
治療
多発性骨髄腫そのものに対しては、抗がん剤とステロイドを組み合わせた内科療法を施します。
しかし、多発性骨髄腫に関連して様々な症状がみられるので、これらに対応するために、鎮痛剤の投与や輸液などの治療を行う場合もあります。
多発性骨髄腫に罹患した骨の疼痛の軽減や高カルシウム血症の軽減を目的としてビスホスホネート製剤を応用することもあります。
予防法
発症するメカニズムがわかっていないため、これといった予防法はありません。
体の不調があっても詳しく検査をしてみなければ病気をみつけられないので、最近愛犬の調子がよくないと思ったら当院までご相談ください。
まとめ
多発性骨髄腫は、腫瘍といっても腫瘤(しこり)ができるわけではないので、外見上からはわかりにくい病気です。
また、腫瘍を疑っても専門的な知識が少なければ、検査の結果を見落としてしまう危険もあります。
なお、当院では腫瘍の治療に力を入れており、腫瘍科に経験・知識が豊富なアドバイザーをお招きしているため、検査から治療に至るまで、安心してご利用ください。
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