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肝臓の部分切除術とは?|犬や猫の肝臓腫瘍の治療法を解説

犬や猫の肝臓に病気が見つかった場合、治療法の1つに部分切除術があり、特に病変が限られた範囲にある場合に効果的です。
肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、なかなか症状に現れにくく、気づいたときには病気が進行していることが少なくありません。
そのため、部分切除術が適応できる段階で病気を発見し、早期に治療を行うことが大切です。

今回は、犬や猫によく見られる肝臓の病気について、そして部分切除術の手順や術後のケア方法について詳しくお伝えします。

犬や猫によく見られる肝臓の病気

犬や猫では、以下のような肝臓の病気がよく見られます。

・肝炎(特に慢性)
肝炎は代謝異常や中毒、感染、自己免疫の影響など、さまざまな原因で引き起こされる病気です。特に慢性肝炎は治療に時間がかかることがあります。

・門脈体循環シャント
若い小型犬に多い病気です。肝臓と腸をつなぐ門脈という血管と、全身をめぐる血管(体循環)の間に、血流がショートカットしてしまう「シャント」と呼ばれる異常な血管ができることで、肝臓に十分な血液が届かず、肝臓の解毒機能が低下してしまいます。

・脂肪肝(肝リピドーシス)
肥満の猫に多いです。肝臓に脂肪が溜まり、正常な機能が妨げられる病気です。

・肝臓の腫瘍
肝臓には、肝細胞腺腫などの良性腫瘍や、肝細胞癌などの悪性腫瘍が発生することがあります。

肝臓腫瘍についてはこちらで解説しています

肝臓の病気は食欲や消化機能に影響し、元気がなくなる、食欲不振、嘔吐や下痢、体重減少といった症状が現れます。さらに病気が進行すると、歯茎や白目が黄色くなる(黄疸)こともあります。血が止まりにくくなったり、腹水が貯まるようになることもあります。
また、肝臓には解毒作用があるため、こうした病気を放置すると毒素が体に蓄積し、肝性脳症と呼ばれる危険な状態に陥ることもあります。

これらの病気の中でも、部分切除術は主に肝臓の腫瘍に適用される治療法です。しかし、腫瘍が肝臓全体に広がっている場合や、他の臓器に転移している場合は、他の治療法を検討する必要があります。

 

肝臓の部分切除術(肝葉手術)の方法と手順

まず、肝臓にどのような病変があるかを詳しく調べるために、血液検査や画像診断を行います。

肝臓に腫瘍が疑われる場合は、どの程度広がっているか、転移がないかを確認し、病変が限られた範囲にとどまっていれば手術を検討します。
腫瘍が肝臓の外側に限られている場合には、部分切除術が適用されることが一般的ですが、腫瘍が複数ある場合や太い血管の近くに位置する場合、あるいは転移の可能性がある場合には、他の治療方法をご提案することもあります。

部分切除術では、肝臓の病変部分を周囲の正常な組織と一緒に切り取ります。
肝臓には血管が多く集まっているため、切除中に出血が起こりやすい臓器です。このため、手術前には輸血や輸液の準備を整えていますが、大きな血管が関わる場所に病変がある場合、出血が増えることもあります。
切除後はしっかり止血されているか確認し、問題がなければお腹を閉じて手術を終了します。

なお、肝臓の部分切除は、部位によって大きく難易度が異なり、一般的には下記のとおりとされています。

 難易度低外側左葉、内側左葉、方形葉先端
 難易度高方形葉根本、内側右葉、内側左葉、尾状葉(尾状突起、乳頭突起)

 

術後のケア

手術直後は、犬や猫がまだ元気に動けず、食欲も完全に戻っていないことが多いため、回復するまでは入院して様子を見ます。
なお、肝臓の近くには消化を助ける「膵臓」という臓器があり、手術によって膵臓に負担がかかると、嘔吐などの症状が続くこともあります。特に問題がなければ入院は数日ほどですが、もし膵炎などの合併症が起こった場合は、入院が長引くこともありますのでご了承ください。
また、術後も定期的にご来院いただき、転移や再発がないかを確認することが大切です。

ご家庭でのケアとしては、肝臓に負担をかけないよう、肝臓の働きをサポートするフードを与えていただく場合があります。
さらに、術後の合併症や再発を早めに見つけるために、元気や食欲の様子、嘔吐などがないかをよく観察し、少しでも気になる変化があれば、すぐに動物病院にご相談ください。

 

まとめ

肝臓の部分切除術は、肝臓にできた腫瘍を取り除くための治療法のひとつです。
肝臓は、栄養の蓄積や解毒など、体にとって大切な役割を果たしている臓器のため、病気は早めに発見して治療することが重要です。

肝臓の病気は症状が出にくく、気づいたときには進行していることもあるため、定期的な健康診断を活用して、早期発見につなげていきましょう。

 

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犬や猫の嘔吐について|愛犬愛猫が吐いていたらすぐに病院に連れていく必要がある?

 

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※記事作成当時のエビデンスに基づくもので最新のものと異なる可能性があります。