急に吐いたり下痢をしたり…これって胃腸炎?|季節の変わり目は要注意
犬や猫が急に吐いたり下痢をしたりすると、驚いて不安になる飼い主様も多いのではないでしょうか。
嘔吐や下痢といった消化器のトラブルは比較的よく見られる症状ですが、その原因はさまざまです。
なかでも多いのが、「急性胃腸炎」と呼ばれる状態です。この病気は、急激な気温の変化(暑さや冷え込み)、食事内容の変化、環境のストレスなどが引き金になることもあり、季節の変わり目は特に注意が必要です。
また、原因によっては症状が悪化したり、体調が急変したりするケースもあるため、少しでも気になる症状があれば、早めに動物病院を受診することが大切です。
今回は、犬や猫に見られる急性胃腸炎について、主な症状や動物病院を受診する目安、そして日常生活で気をつけたい予防のポイントまで解説します。
目次
急性胃腸炎とは?|突然起こるお腹のトラブル
急性胃腸炎とは、胃や腸などの消化器に突然炎症が起こる病気です。
名前の通り、「急に」症状が現れるのが特徴で、比較的短い期間(数日ほど)で症状が落ち着くことが多いとされています。
よく似た病気に「慢性胃腸炎」がありますが、こちらは数週間から数カ月以上にわたって症状が続く点で異なります。
急性胃腸炎は、はじめは軽い症状でも、原因や体調によっては急激に悪化することもあるため、注意が必要です。
<急性胃腸炎でよく見られる症状>
・嘔吐(何度も吐く、吐き気を繰り返す)
・下痢(水のような便、血が混じることも)
・食欲の低下
・元気がなくなる(動かなくなる、反応が鈍くなる)
これらの症状が急に現れた場合には、急性胃腸炎の可能性があります。
原因|日常のちょっとしたことがきっかけに
急性胃腸炎は、さまざまなきっかけで突然起こることがあります。
一見すると何でもないような日常の出来事が、犬や猫の体にとっては負担になってしまうこともあります。
◆ 食べすぎ
いつもより多くの量を一気に食べてしまうと、胃腸がうまく消化しきれず、未消化のものが吐き出されたり、腸内で不調が起きたりすることがあります。
◆ 拾い食い(異物の誤食)
お散歩中やおうちの中で、床に落ちているものを口にしてしまうことがあります。不衛生なものや異物を誤って食べてしまうと、胃腸に大きな負担がかかり、炎症や中毒症状を引き起こすこともあります。
◆ 急な食事の変更
フードを急に変えると、胃腸がうまく対応できず、炎症や下痢を起こすことがあります。新しいフードに変える際は、数日かけて少しずつ慣らしていくのが安心です。
◆ 気温の急変
急に暑くなったり寒くなったりするなど、気温の変化が激しいと体調を崩しやすくなります。特に季節の変わり目は、胃腸の働きにも影響を与えることがあります。
◆ ストレス
環境の変化(引っ越し、家族構成の変化、大きな音など)や不安な出来事があると、精神的なストレスから胃腸の働きが落ちてしまうことがあります。ストレスは見えにくい原因のひとつですが、消化器の不調につながることも少なくありません。
◆ ウイルス・細菌・寄生虫の感染
ウイルス(例:パルボウイルス)、細菌(例:サルモネラ菌)、寄生虫(例:ジアルジアなど)といった病原体が原因で胃腸炎を引き起こすケースもあります。感染性の胃腸炎は他の動物や人への影響にも注意が必要です。
どんなときに様子見でいい?|受診の目安を見極めましょう
嘔吐や下痢といった症状が見られたとき、「すぐに動物病院へ行くべきか、それとも少し様子を見ても大丈夫なのか」と迷われる飼い主様も多いかと思います。
ここでは、「様子を見てもよいケース」と「早めに受診が必要なケース」の目安をご紹介します。
<様子を見てもよいケース>
次のような場合は、しばらく自宅で様子を見ながらケアしてもよいと考えられます。
・嘔吐や下痢が1回だけで、それ以降は落ち着いている
・元気や食欲がある
・普段どおりに歩いたり、遊んだりできている
ただし、こうした場合でも、水分はしっかり摂れているか、その後症状がぶり返していないかなど、注意深く見守ることが大切です。
<すぐに動物病院を受診した方がよいケース>
以下のような症状がある場合は、なるべく早めに受診されることをおすすめします。
・1日に何度も嘔吐や下痢を繰り返す
・ぐったりしていて元気がない
・食欲がまったくない/フードに興味を示さない
・便に血が混じる、あるいはタール状の黒っぽい便が出る
・目が落ちくぼんでいる、皮膚をつまむと戻りにくいなど、脱水が疑われる
・お腹に触ろうとすると嫌がる
・子犬・子猫やシニアの犬猫、または持病がある
特に幼齢・高齢の犬や猫、持病がある場合は体力の消耗も早いため、軽い症状でも念のため早めの受診が安心です。
上記はあくまで目安であり、実際の判断は迷うことも多いと思います。
そのようなときは、半日から1日ほど様子を見て改善がない場合や、症状が少しでも悪化していると感じたときには動物病院にご相談ください。
受診時に伝えたいポイント|診察をスムーズにするために
受診前には以下のような情報をまとめておき、診察時に獣医師までお伝えください。ご家庭での様子が詳しくわかることで、正確な診断と適切な治療につながります。
<受診時に伝えたい主な情報>
・いつから症状が出ているか(例:昨日の夜から、今朝から など)
・どのような症状か(嘔吐、下痢、食欲不振、元気がない など)
・便や吐しゃ物の状態(色、形状、におい、回数 など)
・直前に食べたものや与えたおやつ、拾い食いの可能性など
この中でも特に重要なのが、便や吐しゃ物の状態です。
色や硬さ、におい、異物の有無などは、体の中で何が起きているかを知るうえで大切な手がかりになります。
可能であれば、スマートフォンで写真や動画を撮っておくと、より正確な情報を獣医師に伝えやすくなります。
また、便や吐しゃ物を少量でもよいので清潔な容器などに入れて持参すると、その場で検査に使える場合もあります。
診察では何をするの?|検査や治療の流れ
急性胃腸炎が疑われる際に、動物病院で行われる一般的な検査や治療の流れについてご紹介します。
<検査の内容>
まずは、症状の原因を探るための検査が行われます。主に次のような検査があります。
・触診(お腹の張りや痛みをチェックします)
・問診(ご家庭での様子や食事内容、症状が始まったタイミングなどを詳しく伺います)
・必要に応じた検査
└ 血液検査(炎症や脱水の程度を確認)
└エコー検査(超音波検査で内臓の状態を確認)
└糞便検査(寄生虫やウイルス、細菌のチェック)
これらの情報を総合的に判断し、胃腸炎の原因をできるだけ正確に見極めます。
<治療の内容>
治療は、検査結果や症状の重さに応じて決まります。主な治療法は以下の通りです。
・内服薬による治療
軽度の胃腸炎であれば、下痢止めや吐き気止めなどのお薬で症状のコントロールを行います。
・点滴による水分補給
嘔吐や下痢が続いて脱水症状が見られる場合、水分と電解質を補うために点滴を行います。
・療法食への変更
下痢の治療に効果的とされている療法食への変更が望まれます。当院では腸内バイオーム(ヒルズ)や消化器サポート(ロイヤルカナン)をおすすめしています。
└腸内バイオーム<犬用>
└腸内バイオーム<猫用>
└消化器サポート-犬用食事療法食
└消化器サポート-猫用食事療法食
・入院による管理
ぐったりしている、食事をまったく受けつけない、出血がある、脱水が進んでいるといった症状がある場合には、入院のうえで集中的な治療が必要になることもあります。
胃腸炎を防ぐには?|日常でできる予防のヒント
胃腸炎は、ちょっとしたきっかけで起こることもありますが、日ごろの心がけでリスクを減らすことができます。
以下のようなポイントを日常に取り入れてみましょう。
◆ 食事の保存・管理をしっかりと
フードは直射日光や高温多湿を避けて保存し、開封後はできるだけ早めに使い切るようにしましょう。劣化したフードや傷んだ食べ物は、胃腸への負担になる可能性があります。
◆ フードはゆっくりと切り替える
新しいフードに変える際は、いきなり全量を切り替えるのではなく、1週間ほどかけて少しずつ混ぜていく方法がおすすめです。急な変更は、胃腸に負担をかけてしまうことがあります。
◆ 拾い食いの予防を
お散歩中や室内での拾い食いには十分注意しましょう。不衛生なものや異物を口にすると、胃腸炎や中毒を起こすリスクがあります。お散歩中は周囲に気を配り、家の中もこまめに片づけておくと安心です。
◆ ストレスをできるだけ減らす
急な環境の変化や騒音、人の出入りなどは、犬や猫にとって大きなストレスになることがあります。安心して過ごせる空間づくりや、穏やかなコミュニケーションを心がけましょう。
◆ ワクチン・寄生虫予防の継続を
ウイルスや寄生虫が原因となる胃腸炎もあります。定期的なワクチン接種や寄生虫の予防を続けることで、感染リスクをしっかりと抑えることができます。
◆ 毎日のチェック習慣を
「元気があるか」「食欲はどうか」「排泄の状態はいつも通りか」など、日々のちょっとした変化に気づけるよう、観察する習慣をつけましょう。小さな異変に早く気づくことが、病気の早期発見・早期対応につながります。
まとめ|重症化のサインを見逃さないで
犬や猫の急性胃腸炎は、軽い症状であれば早めに適切なケアを行うことで、比較的スムーズに回復することが多い病気です。
しかし、「元気そうに見えるから大丈夫」と思って様子を見ているうちに、症状が悪化してしまうこともあります。
嘔吐や下痢が続くと、体内の水分が失われて脱水症状を引き起こすことがあり、場合によっては命にかかわる状態に発展することもありますので、少しでも不安なことや気になる症状があれば、いつでも当院にご相談ください。
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