猫の目をこする仕草に注意|眼瞼炎の原因と治療法を解説
愛猫が目をこする仕草や、目元を気にする様子があると、不安に感じる飼い主様も多いと思います。そんな目のトラブルの原因の一つとして挙げられるのが、眼瞼炎(がんけんえん)です。
この病気は、さまざまな原因によって発症するため、早期に動物病院で診察を受け、原因を特定して適切な治療を行うことが重要です。
今回は猫の眼瞼炎について、まず「眼瞼とは何か」についてご説明し、その上で眼瞼炎の症状、原因、治療法について詳しくお伝えします。
目次
眼瞼炎とは?
眼瞼炎(がんけんえん)とは、何らかの原因によって眼瞼(まぶた)に炎症が起こった状態を指します。まぶたは、顔の皮膚と連続して目を囲む部分であり、上眼瞼と下眼瞼に分かれています。
まぶたには重要な役割があり、以下のように目の健康を守る働きを担っています。
・外部の刺激から目を保護する
・異物を取り除くための瞬きを行う
・涙の蒸発を防ぎ、目の表面を潤す
また、眼瞼にはマイボーム腺という腺組織が存在し、脂質成分を分泌しています。この脂質は、涙の蒸散を防ぐ重要な成分です。
なお、犬では上眼瞼にまつげが生えていますが、猫では上下の眼瞼にまつげがないため、まぶたのトラブルの発見が遅れやすいこともあります。
症状
眼瞼炎を発症すると、まぶたにさまざまな変化が現れます。代表的な症状として、まぶたのかゆみや赤みがよく見られ、猫が頻繁に目をこする様子が見られます。これは炎症による不快感が原因で、こする行為がさらに症状を悪化させる恐れがあります。
また、以下のような症状も見られることがあります。
・目の周りの毛が抜ける
・瞬きの回数が増える
・涙の分泌量が増える
・目やにが多くなる
さらに、眼瞼にあるマイボーム腺が詰まることで、まぶたの縁に白い点線状の詰まりが見えることもあります。このような状態では、まぶたの脂質分泌が滞り、目の表面が乾燥しやすくなり、炎症が悪化する原因になります。
こうした症状が見られた場合、猫が目をこすり続けることで二次感染や眼球に傷が付いてしまうリスクもあるため、早期に動物病院で診察を受けることが大切です。
原因
猫の眼瞼に炎症を起こす代表的な疾患には以下のものが挙げられます。
・眼瞼腫瘍
猫の眼瞼には、良性または悪性の腫瘍が発生することがあります。良性のものでは乳頭腫があり、悪性では扁平上皮癌が代表的です。早期に発見して適切な処置を行わないと、眼球への影響や視力の障害を引き起こすことがあります。
・マイボーム腺炎
眼瞼にあるマイボーム腺が細菌感染や詰まりによって炎症を起こす疾患です。腫れや痛みを伴い、まぶたの縁に膿がたまることもあります。重症化すると、目の表面が乾燥しやすくなるため、迅速な治療が必要です。
そのほかにも眼瞼炎の原因として、以下のものが挙げられます。
・皮脂の分泌過剰
皮脂が多く分泌されると、まぶたのマイボーム腺が詰まり、炎症が引き起こされやすくなります。
・細菌、真菌(カビ)、寄生虫などの感染
これらの微生物がまぶたに感染すると、炎症や腫れ、目ヤニの増加などの症状が現れます。
・アレルギー(アトピー性皮膚炎など)
アトピー性皮膚炎のようなアレルギー反応が目の周囲に影響を及ぼし、かゆみや赤みを引き起こすことがあります。
・異物の混入や引っかき傷などによるケガ
猫同士のケンカや目に入ったゴミが原因となり、まぶたに炎症が生じることがあります。
診断
眼瞼炎は、アレルギーや全身の病気が原因となっていることもあるため、動物病院では目だけでなく皮膚の状態も詳しく観察します。特に、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患が、まぶたの炎症と関連している場合もあるため、目元の異常が他の部位に波及していないかを確認することが重要です。
あわせて眼科検査を実施し、眼瞼だけでなく角膜や結膜など、他の目の構造に異常がないかも確認します。さらに、感染の有無を調べるための検査や、アレルギーを調べるための検査も並行して行います。
診断では、原因の特定が治療のカギとなるため、総合的な検査を通じて、動物の全身状態をしっかり把握することが大切です。
治療
眼瞼炎の治療では、原因に応じた適切な治療法を選ぶことが重要です。そのため、まずは検査によって原因を正確に把握し、それに基づいた治療を進めます。
感染が確認された場合は、抗菌薬、抗真菌薬、または駆虫薬などを投与し、細菌、真菌、寄生虫による炎症を抑えます。感染の種類に応じて、内服薬や点眼薬などが使われることが一般的です。
アレルギーが原因の場合は、目の炎症だけでなく、全身のアレルギー症状を改善する必要があります。この場合、抗炎症薬(ステロイドなど)や抗ヒスタミン薬を使用して、体内のアレルギー反応を抑えます。
また、猫が目をこすったり引っかくことで炎症が広がるのを防ぐため、エリザベスカラーの装着が勧められることもあります。
予防法やご家庭での注意点
眼瞼炎の予防や症状の悪化を防ぐためには、日頃からの環境管理とこまめなケアが大切です。
まず、飼育環境を清潔に保つことが基本です。感染の機会を減らし、アレルギーの原因となる室内のホコリやダニ、カビを取り除くため、こまめな掃除を心がけましょう。空気清浄機の使用も、アレルゲンを減らす効果が期待できます。
また、猫の顔やまぶたに目ヤニやゴミが付いているときは、コットンや柔らかい布を使って、優しく拭き取ってあげましょう。目元を清潔に保つことで、炎症の予防や悪化防止に役立ちます。
さらに、眼瞼炎の重症化を防ぐためには、目に少しでも異変を感じたら早めに動物病院を受診することが重要です。
まとめ
猫の眼瞼炎は命に関わる病気ではありませんが、目のかゆみや不快感が生活の質(QOL)を大きく損なう可能性があるため、早めに対処することが大切です。炎症を放置すると、猫が目をこすり続けることで二次感染や眼球の損傷を引き起こすリスクもあるため、早期の診察と治療が必要です。
また、眼瞼炎はアレルギーが関与している場合もあるため、動物病院でアレルギー検査を受け、その結果に基づいて飼育環境を整えることが重要です。
適切な治療とケアで、愛猫が健やかな毎日を送れるよう、しっかりとサポートしてあげましょう。
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