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猫の口腔内腫瘍について|愛猫の口臭や食欲不振は要注意!

口腔内腫瘍とは、口の中に発生する様々な腫瘍のことを指します。腫瘍は痛みを引き起こすため、食事を取ることが難しくなる場合があります。
もし愛猫が以前に比べて食欲の低下や、口臭が強くなっている場合は、口腔内腫瘍のサインかもしれません。

今回は猫の口腔内腫瘍について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。

原因

口腔内腫瘍の発生原因は完全には解明されていませんが遺伝的な要因や不適切な栄養、慢性的な炎症などが影響していると考えられています。

特に扁平上皮癌という悪性腫瘍は、猫の口腔内で最も一般的に見られるタイプで、口腔内腫瘍全体の60%以上を占めています。

 

症状

口腔内腫瘍は、歯肉、唇、頬の内側、喉など、口内の様々な場所に発生することがあります。
痛みを伴うため、食事を避けるようになることも多く、これが体重減少や栄養不足につながります。また、過剰によだれが垂れたり、口臭が強くなったり、口から出血することもあります。

特に扁平上皮癌という種類の腫瘍は進行が速く、猫の命に関わるため、初期の症状を見逃さず、早めに適切な治療を始めることが非常に重要です。

 

診断方法

診断する際には、まず視診で腫瘍の外観を確認し、異常が見られる場所の状態を把握します。
さらに詳しい情報を得るためには、腫瘍の組織の一部を採取して、その種類を特定する生検を行います。
また、全身の状態を把握し、腫瘍が他の部位に転移していないかを確認するために、超音波検査(エコー)、X線検査、CT検査が行われます。

 

治療方法

治療法は腫瘍の種類や進行状態によって異なりますが、一般的には外科手術、放射線治療、抗がん剤治療が考慮されます。これらの治療は、単独で行われることもあれば、より効果的な結果を得るために組み合わせて行われることもあります。

外科手術では、可能な限り腫瘍を取り除くことを目指します。特に腫瘍が顎の骨や鼻に広がっている場合は、骨や他の組織を含めた広範囲の切除が必要になることがあります。

抗がん剤治療は、特に悪性腫瘍の場合に効果を発揮し、腫瘍の再発や転移を抑えるために重要です。最近では、抗がん剤の分子標的薬トセラニブと、抗炎症薬のNSAIDSという種類の薬を併用する治療が提案されており、扁平上皮癌の治療に有効であると言われています。

放射線治療は、外科手術で腫瘍を完全に切除することが難しい場合や、抗がん剤治療が効果不十分と判断された場合に選択されます。
また、がんの完治が難しい場合には、痛みや呼吸困難、排便障害、摂食障害などの症状を和らげる目的で緩和的放射線治療が用いられることもあります。
放射線治療は通常、複数回にわたって行われるため、定期的な通院や入院が必要です。

全身状態が悪い場合は、手術や放射線治療が適用できないこともあります。その場合、全身の状態を安定させるための投薬やその他の管理が優先されます。

最も重要なのは、飼い主様が獣医師と十分に話し合い、愛猫にとって最適な治療計画を立てることです。

放射線治療についてはこちらで詳しく解説しています
抗がん剤治療についてはこちらで解説しています

 

予防法やご家庭での注意点

口腔内腫瘍を完全に防ぐ方法は現在のところ確立されていませんが定期的な口腔検査を行い、初期段階で異変を発見できれば、進行を防ぐことができます。

日常の口腔ケア、特に歯磨きは腫瘍の早期発見につながり、歯周病など他の口腔疾患の予防にも非常に効果的です。

歯磨きについてはこちらで解説しています

さらに、受動喫煙などの環境因子も口腔内腫瘍の発生に影響を与える可能性があります。愛猫の健康を守るために、これらのリスクを可能な限り避け、清潔で安全な生活環境を提供することが重要です。

 

まとめ

愛猫の行動や健康状態に異変を感じたときは、早めに動物病院での診察を受けることが非常に重要です。症状が初期段階であればあるほど、治療の選択肢も多く、成功の可能性も高まります。
何か気になることがあれば、遠慮なく当院の獣医師にご相談ください。

 

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※記事作成当時のエビデンスに基づくもので最新のものと異なる可能性があります。

 

<参考資料>
Wiles V, Hohenhaus A, Lamb K, Zaidi B, Camps-Palau M, et al. Retrospective evaluation of toceranib phosphate (Palladia) in cats with oral squamous cell carcinoma. J Feline Med Surg. 2016 Jan