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DAIGO PET CLINIC

犬と猫の尿路変更術について|尿管を新たに別の場所へとつなぐ手術

今までの記事で、犬や猫の尿を出やすくするための方法として、尿管切開SUBシステム、会陰尿道造瘻、尿道再建術についてご説明しましたが、今回は尿路変更術という治療法をご紹介します。

尿路変更術は事故によるケガで尿路が途切れてしまったり、腫瘍などで尿路が詰まったりしたときに有効で、通常の経路とは違ったところに尿管をつなぎ合わせることで、犬や猫の命を救うことができます。

今回は、犬と猫の尿路変更術について解説していきます。

尿路変更術とは

尿路とは、腎臓から尿管、膀胱、尿道を経て尿が排泄される経路のことをいいます。
尿路変更術とは、何らかの理由で膀胱や尿道が途切れたり詰まってしまったりした際に、尿管を別の場所につなぐことで、通常の経路とは違った尿路を新しくつくる手術のことです。

 

尿路変更術が適応されるケース

尿路変更術が適応されるのは、以下のようなケースです。

膀胱の腫瘍(特に移行上皮癌)による尿路閉塞
・交通事故などによる膀胱や尿道の損傷
・炎症による尿道の重度の線維化(粘膜が硬く厚ぼったくなること)

 

手術の流れとポイント

尿路変更術にはさまざまな方法がありますが、当院では尿管新吻合術という術式を採用しています。この手術は尿管を膀胱ではなく、新たに別の場所へとつなぐ手術で、メスでは腟、オスでは包皮に移植することが一般的です。
膀胱に異常がある場合は、膀胱を一部あるいは全部取り除く手術も並行して実施します。

なお尿管の外科術式として、今回ご紹介する尿管新吻合術のほかに、尿管の子宮などへの移植、ガストロボタンの設置、尿管切開SUBシステムなどがあります。
それぞれにメリット・デメリットがあり、適応される状況も違ってきますので、詳しくは獣医師までお気軽にお尋ねください。

 

尿路変更術のメリットとデメリット

尿路変更術のメリットは以下のとおりです。

尿路を新しくつくることで、術前の尿路に問題があっても排尿できるようになる
内科治療や別の術式で尿路閉塞が治らないときでも、閉塞を解決できる場合がある
膀胱や尿道が広い範囲で損傷あるいは線維化していても利用できる

一方で、以下のようなデメリットも存在します。

合併症が発生するリスクがある(少しでも患部に炎症が残っている状態で縫い合わせると閉塞が起こりやすいため、切断・縫合時には細心の注意を払います。)
自力での排尿が難しくなる(特に膀胱をすべて摘出した場合)

 

まとめ

尿路変更術は、尿を排泄するための経路を新しくつくる手術で、膀胱腫瘍や事故によるケガなどに適用されます。尿が出ないと、QOL(生活の質)が下がるだけでなく、尿毒症など命の危険に関わる状態に陥ることもあるため、お早めにご相談ください。

 

■関連する記事はこちらで解説しています
犬や猫の尿道再建術について|損傷した尿道を作り直す手術
犬や猫の会陰尿道造瘻について|尿道閉塞が治らないときの最終手段
猫の尿管切開SUBシステムについて|猫の泌尿器系疾患の治療に有効

 

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※記事作成当時のエビデンスに基づくもので最新のものと異なる可能性があります。